著者:柳澤大介(株式会社マイノリティ代表取締役)キーエンス・メルペイ・スマートニュースを経て、2021年2月にBtoB営業・マーケティングコンサルティング会社を創業。現在は大手〜中小企業の営業DX支援に携わりながら、Claude等の生成AIを日常的な業務に統合活用している。
この記事のポイント
- 商談議事録をAIで作る全体の流れと、tl;dv・Zoom・Claudeを使った具体的な手順(ChatGPT・Geminiでの置き換え方も)
- 議事録に残す4項目と、提案書につなげるAIへの抽出ルール、数字を作らせない確認方法
- 初回商談の4日後に30枚の提案書を出した実案件の流れと、議事録に残った数字
- 週30分で回すAI商談レビューの5つの観点(プロンプト実物)とレポートの型
- 録音を現場に定着させる進め方と、録画の停止忘れなど実際に起きた失敗
目次
商談のたびに議事録を書いても、あとから読み返されず、次の提案にも使われない。そんな営業組織は少なくありません。時間をかけて書いた議事録が、そのまま眠ってしまうのはもったいないことです。
私はキーエンスグループで営業を経験し、いまはBtoB企業の営業組織づくりを支援しています。自社では、すべての商談を録画して文字起こし(録音した会話を、文字のデータにすること)を行い、そのテキストを生成AIのClaudeに読み込ませています。
使い道は、次の3つです。
たとえば提案書の初稿は、議事録をもとに約20分でできあがります。
この記事では、商談議事録をAIで作る方法を、AIを使い始めたばかりの方にも分かるように解説します。私が実際に使っている手順と、支援先で決めている運用ルールを、実物のプロンプト(AIへの指示文)や実際の案件の数字も交えて、順番に紹介します。説明はClaudeを例に進めますが、ChatGPTやGeminiなど、ほかの生成AIでも同じ流れで使えます(3-4で補足します)。
まずは、AIで議事録を作るとはどういうことか、基本から整理します。
AI議事録とは、商談や会議での会話をAIが記録し、議事録の形にまとめてくれる仕組みです。AIが行うことは、大きく分けて次の3段階です。
商談中にメモを取り、あとで清書するという人の作業を、AIが代わりに引き受けてくれるイメージです。
こうしたAIの活用は、すでに多くの企業に広がっています。総務省の令和8年版 情報通信白書によると、業務で生成AIを使っている日本企業は86.4%(わからないと答えた企業を除く)。業務別では、議事録・メール作成補助での活用が約7割と最も多く、効果を実感している割合も約7割でした。
私は、この仕組みを議事録づくりだけで終わらせず、次の3つに使っています。
ここまで広げると、議事録は作って終わりの記録から、次の行動に使う材料に変わります。
議事録を人の手で書いていると、忙しい週ほど記録が後回しになり、そのまま抜け落ちてしまいます。記録のない商談が増えると、あとで振り返りたいときに、データに穴が開いた状態になります。
私が支援している人材サービス会社でも、商談のボイスメモ(スマホでの録音)は残しているのに、CRM(顧客や商談の情報をまとめて管理するシステム)への入力が徹底されていませんでした。録音はあっても、あとで使える記録にはなっていなかったのです。
そもそも人の記憶は、時間とともに急速に薄れていきます。人が覚えたことをどれくらいの速さで忘れていくかは、エビングハウスの忘却曲線として知られています。記憶が新しいうちに記録を残すには、人の頑張りに頼らない仕組みが必要です。
そこで私は、議事録づくりやCRMへの記録といった商談後の作業を、データの分析よりも先に自動化するようにしています。記録がそろっていなければ、分析もできないからです。
記録を仕組みで残す考え方は、キーエンスの外報の仕組みを紹介した記事でも解説しています。
AI議事録ツールはたくさんありますが、この記事ではツール同士の比較はしません。代わりに、私の運用や失敗から、導入前に確かめておきたい点を4つにまとめました。
| 確かめること | なぜ大事か | 記事内の実例 |
|---|---|---|
| 文字起こしを、ファイルとして書き出せるか | 書き出したファイルをClaudeなどの生成AIに渡せば、議事録だけでなく、提案書や商談の振り返りにも使い回せるため | 3-1 |
| 録画の開始と停止が、ひと目で分かるか | 止め忘れると、お客様の退出後の社内の会話まで記録に残るため | 8-1 |
| CRMとつないだとき、議事録がどこに入るか | つなぎ方によっては、議事録が相手に送られたり、同じ商談が二重に登録されたりするため | 8-2 |
| 入力したデータを、AIの学習に使われない設定にできるか | 商談の音声や文字起こしには、お客様の個人情報が含まれるため | 8-3 |
どれも、ツールの機能だけでなく、社内の運用ルールとあわせて確かめておくと安心です。
ここからは、私が実際に使っている流れを紹介します。全体は次の3ステップです。
主に使うツールは2つです。tl;dvは、オンライン商談を録画し、文字起こしまで自動で行うAI議事録ツールです。Claudeは、Anthropic社が開発した生成AIで、指示に応じて文章や資料を作ってくれます。
私は、議事録と提案書づくりをClaudeに任せています。Claudeの代わりにChatGPTやGeminiを使いたい方向けに、3-4で補足しています。
最初のステップは、商談の会話を文字のデータにすることです。私は、すべての商談を録画し、tl;dvなどのAI議事録ツールで自動的に文字起こしをしています。(最近のお気に入りはCircleback)
Zoomで行った商談の場合は、Zoomが作る文字起こしのファイル(WebVTT形式※)を使います。このファイルをそのままClaudeなどの生成AIに渡せば、AIが商談の会話を読み取れる状態になります。
対面の商談など、録画しにくい場面もあります。その場合は、スマホのボイスメモで録音しておき、その音声ファイルを、音声を読み込めるAIに渡します。これだけで、約1分で議事録の骨格(たたき台)ができます。
私が支援している人材サービス会社では、もともと、ボイスメモは録っているのにCRMへの入力が進まないことが課題でした。そこで、音声をGemini(Googleの生成AI)で文字起こしする作業を、商談が終わった直後の5分で必ず行うルーティンに決めました。
なお、Geminiで文字起こしをする細かい手順は、この記事では割愛します。ポイントは、どのツールを使うかよりも、商談直後の5分のように時間を決めて、毎回同じように記録を残すことです。
※WebVTT形式(Web Video Text Tracks Format)は、Webサイト上の動画や音声に、字幕・キャプション・チャプター(章)などの情報を時間に合わせて表示するための標準的なテキストファイル形式です。ファイルの拡張子には「.vtt」が使用されます。
2つ目のステップは、文字起こしから議事録を作ることです。ここでは、Claudeのプロジェクトという機能を使っています。
Claudeのプロジェクトとは、テーマごとに用意できる作業部屋のようなものです。部屋の中に資料や指示をまとめて置いておけるので、毎回同じ説明をしなくても、AIが同じ前提で作業を進めてくれます(Claudeのヘルプ:プロジェクトとは)。
私は、議事録作成という名前のClaudeのプロジェクトを作り、議事録の作り方を、指示としてあらかじめ登録しています。使い方はシンプルで、商談の文字起こしファイル(VTTファイル)を1本入れるだけです。
ファイルを入れると、AIが登録しておいた指示に沿って、次の4項目で議事録を自動で作ります。
できあがった議事録は、Googleドライブ(Googleのファイル保存サービス)に保存されるところまで自動で終わります。ClaudeとGoogleドライブを、あらかじめつないであるためです。
このつなぐ機能を、Claudeではコネクタと呼びます。設定方法は、この記事では割愛します。
このプロジェクトでは、議事録のあとに、3-3で紹介する提案書なども続けて作れます。5章で紹介する案件では、文字起こしファイル1本から、最終的に次の3種類のファイルができあがりました。
ほかのお客様との商談も同じプロジェクトに入れ、案件ごとに同じ流れで回しています。作り方を登録してあるので、毎回ゼロから指示を書く必要はありません。

3つ目のステップは、議事録をもとに提案書の初稿を作ることです。流れを分けると、次の3段階になります。
2の部品はあらかじめ用意しておき、1と3をClaudeが一気に進めます。人がスライドを一から作る必要はありません。
この仕組みは、外部のパートナー企業と一緒に検証しながら作りました。検証は、次の手順で進めました。
トンマナとは、トーン&マナーの略で、色づかいや表現など、資料全体の雰囲気をそろえるためのルールのことです。
デザインシステム.mdの.mdは、マークダウンという形式のテキストファイルです。見出しや箇条書きで文章の組み立てがはっきりするのでAIが読み取りやすく、どのAIにもそのまま渡せるため、AI時代にはかなり大事な形式です。
検証の結果、自社の提案書と同じトンマナ、フォント、レイアウトを守った提案書が、約20分でできあがりました。
とはいえ、毎回2つのファイルを添付するのは手間がかかります。そこでいまは、デザインのルールと提案の組み立て方(提案ロジック)を、Claudeのスキルという機能に登録しています。
スキルとは、特定の作業のやり方を、AIに登録しておける機能です。作業の指示や参考資料をひとまとめにして登録しておくと、AIが必要なときに読み込み、いつも同じやり方で作業を進めてくれます(Claudeのヘルプ:スキルとは)。スキルにしておけば、毎回ファイルを添付しなくても、同じ形式の提案書ができあがります。
提案書づくりには、自社で作ったスキルを使っています。スキルの名前は自分で決められるので、私たちはminutes-to-proposalと名付けました。Claudeに最初から用意されている機能の名前ではなく、あくまで自社で付けたオリジナルの名前です。
スキルは、Claudeだけの機能ではありません。ChatGPTやGeminiにも、同じスキルという名前の機能があります(3-4で補足します)。
なお、ここでできるのは、あくまで初稿です。数字や内容は、4-3で紹介するルールに沿って、人が確認してから仕上げます。
提案書づくりに使える個別のプロンプトはClaudeプロンプト集10選、編集しやすいスライドの作り方はAIスライド作成術で詳しく紹介しています。
この項目は、Claude以外のAIで同じ流れを作りたい方に向けた補足です。Claudeを使う方は、読み飛ばして4章へ進んでください。
ここまで紹介した流れは、Claudeでなければできないものではありません。ChatGPTやGeminiにも、名前は違っても同じ役割の機能があります。ほかのAIで同じ流れを作るときは、機能の名前ではなく、次の3つの役割がそろうかを確かめてください。
たとえばChatGPTには、同じプロジェクトという名前の機能があります。スキルという名前の機能も、ChatGPTとGeminiの両方にあります。
ただし、AIの機能は名前や使えるプランが変わりやすく、プランによっては使えない機能もあります。使い始める前に、各社の公式ヘルプ(ChatGPTのヘルプ、Geminiのヘルプ)で確認してください。
なお、6章で紹介する商談レビューのプロンプトは、どのAIでもそのまま使えます。
AIに任せるとしても、議事録に何を残すか、提案書のために何を拾うかは、人があらかじめ決めておく必要があります。ここでは、実際に支援先で使っている議事録のテンプレートと、社内で決めている抽出のルールを紹介します。
私が支援先(食品製造業、人材サービス、中古PC販売)で使っている議事録のテンプレートは、次の4項目だけです。
書き方はとても簡単です。4つの見出しをコピーして貼り付け、その下に1〜3行ずつ書くだけ。きれいな文章にする必要も、清書する必要もありません。
合格ラインは10行、目安は20行前後です。
その日に話したテーマが多くても、主要なものを2〜3本に絞って構いません。ただし、次の2つだけは必ず残してください。
この2つは、受注できなかった理由を分析する失注分析や、あとで改めて提案する再提案の元データになるからです。
そのままコピーして使えるテンプレートは、次のとおりです。かっこの中を、その日の内容に書き換えてください。
| ## 参加者 (先方と自社の出席者) ## 議題 (何について話したか) ## 協議内容・決定事項 (決まったこと。ロット・価格・時期などの数値と、断られた理由は必ず残す) ## ネクストアクション (だれが、いつまでに、何をするか) |

議事録から提案書を作るときは、要点をまとめたものではなく、議事録(文字起こし)の全文をAIに読ませています。課題を表す生の言葉、予算についてのひと言、相手の会社の褒めどころ(強み)は、商談の終盤の雑談で出てくることが多いからです。要点だけを渡すと、こうした大事な情報が抜け落ち、提案の精度が下がります。
では、全文から何を抜き出すのか。それを決めているのが、社内の議事録分析プレイブックです。
プレイブックとは、仕事の進め方や判断の基準をまとめた社内の手引き(マニュアル)のことです。もとはアメリカンフットボールの作戦集を指す言葉です。
私の会社では、議事録の全文から、どの項目を、どのように抜き出すかを、このプレイブックに決めています。AIに作業させるたびに、同じ項目を漏れなく拾えるようにするためです。
抜き出している項目は、次の7つです。
| 項目 | 抜き出す内容 |
|---|---|
| 基本情報 | 正式な社名、出席者と決裁への距離(最終的な決定にどれだけ関わる人か)、紹介元と商談に至った経緯 |
| 事業の現状 | 商材・単価・粗利(売上から原価を引いた利益)、売上規模、社内の体制と社長への依存度、使っている管理ツール |
| 課題 | 顧客が自分の言葉で語った表現をそのまま残す(例:予実が闇の中、言った言わない、良い話しか上がってこない) |
| 目標・数字 | 商談で出た数字と、出なかった数字を分けて記録する |
| 予算・契約条件 | 100万ぐらい、3か月で型を作りたい、伴走型は希望しない、などの発言 |
| 強み・褒めどころ | 提案書で伝える、相手の会社の強み |
| 副次ニーズ | 採用難や知名度など、本題以外の困りごと。別のサービスもあわせて提案(クロスセル)できるかの判断に使う |
課題の例にある予実が闇の中とは、予算と実績の状況が見えていない、という意味の顧客の言葉です。こうした言い回しは要約せず、そのまま残します。
また、商談で出なかった数字は、AIに推測で埋めさせません。詳しくは次の4-3で説明します。
AIで提案書を作るときに、私が一番大事にしているルールがあります。それは、議事録に書かれている事実だけを実績や現状として書き、数字を作らないことです。
生成AIは、事実ではない情報を、もっともらしく作ってしまうことがあります。これはハルシネーションと呼ばれます。国のAI事業者ガイドラインも、AIを使う場面で、人の判断を挟む使い方を検討するよう求めています。
そこで私は、次のように書き分けるルールにしています。
さらに、AIに提案書を作らせる前に、確認ゲート(先へ進む前に人が確認するチェックポイント)を設けています。確認するのは次の3点です。
この3点を人が確認してから、AIに提案書を作らせます。確認なしで完成品を出すことはしません。
ここからは、3章と4章で紹介した流れを、実際の商談でどう使ったのかを紹介します。
2026年8〜9月に私が担当した実案件です(社名・人名は伏せています)。

クライアント企業では、社長が営業の7〜8割を担い、売上の8割は大手企業からの下請け(大手企業から仕事を請け負う形)でした。最大の課題は、社長が持っている営業のノウハウを、社員にどう伝えればよいか分からないことでした。
45分のZoom商談を文字起こしして、3-2のプロジェクトで議事録を作りました。その議事録には、次のような数字が残りました。
| 項目 | 議事録に残った数字 |
|---|---|
| 粗利率 | 下請けXX%、元請け約XX% |
| 平均受注単価 | XXXX万〜XXXX万円 |
| 売上構成 | 下請けX割、元請けX割 |
| 目標 | 3年後に売上X億円、5年後に元請け比率XX% |
| 次回商談 | 9/10 |
※具体的な数字は伏せています。
元請け(発注者から直接仕事を受ける立場)と下請けでは、利益の出方が変わります。こうした数字が議事録にそのまま残っていることが、次の提案書づくりの土台になります。
この議事録をもとに、3-3で紹介したスキルを使って提案書を作りました。商談から4日後の8/31には30枚の初稿ができあがり、9/10の次回商談で提示しています。
提案書の構成は、以下のとおりです。
「解くべき3つの論点」のページには、商談で顧客が話した次の3つの言葉を、そのまま使いました。
4-2で紹介した、顧客の生の言葉をそのまま残すルールが、ここで生きています。
「費用対効果のページ」は、議事録の数字から自動で計算しています。費用対効果のページとは、支援にかかる費用に対して、どれくらいの受注があれば元が取れるのかを示すページです。
計算には、議事録に残った単価や粗利率をそのまま使います。足りない数字を仮に置いた場合は、実数をいただければ差し替える旨を脚注に入れています。4-3で紹介した、数字を作らないルールの実践です。
文字起こしは、議事録や提案書だけでなく、商談そのものの振り返りにも使えます。ここでは、私が毎週行っている、AIを使った商談レビューを紹介します。
私がセミナーなどの登壇でも紹介している手順は、次の4工程です。
このうち、1つ目(録画と文字起こし)と2つ目(AIレビュー)は、AIが自動で進めます。人がやるのは、3つ目(差分の発見)と4つ目(型への反映)の判断だけです。だから週30分で回り、無理なく続けられます。
レビューを始める前に、準備がひとつあります。自社の提案書をAIに読み込ませ、どんなサービスを、どんな価値として、どんな顧客に届けているのかを理解させておくことです。
この準備を飛ばすと、AIは自社の状況をふまえない一般論しか返しません。3-2で紹介したプロジェクトに、提案書を資料として入れておけば、毎回読み込ませる必要はありません。
また、レビューはすべての商談では行いません。対象は、勝ち商談と接戦(勝ったものの危なかった案件と、惜しくも負けた案件)に絞り、週2〜3件を見ています。会議での回し方は営業会議の進め方で解説しています。
私は毎週、次のプロンプトで商談の文字起こしを分析させています。使い方は、このプロンプトと一緒に商談の文字起こしを貼り付けるか、文字起こしのファイルを添付して、Claudeに渡すだけです。ChatGPTやGeminiでも、同じプロンプトをそのまま使えます。
以下の商談の文字起こしを、次の5つの観点で分析して、最後に、改善点を3つ挙げてください。
最初に見るのは発話比率です。発話比率とは、商談の中で、顧客と営業がそれぞれどれくらい話したかの割合のことです。
運用のポイントは、次の3つです。
AIが挙げた改善点をもとに、人が差分を見つけて、営業スクリプトなどの型に反映します。差分とは、うまくいった商談と、そうでなかった商談を同じ観点で比べたときの違いのことです。営業スクリプトとは、商談の流れや質問、切り返しのトークをまとめた台本です。
反映のしかたは、たとえば次の3ステップです。
スクリプトの書き足しは、AIに手伝ってもらうこともできます。たとえば、次のように頼みます。
添付の営業スクリプトに、次の改善点を反映した修正案を作ってください。変えた箇所が分かるように示してください。(ここに改善点を貼り付ける)
AIが作るのは、あくまで修正案です。どの改善点をスクリプトに入れるかは、人が決めます。AIで営業スクリプトを作る手順は、AIで営業スクリプトを自動生成する方法で紹介しています。
トップ営業の型をAIで広げた事例は、インサイドセールスのAI効率化マニュアルで紹介しています。
私の支援先では、AIレビューの結果を、次の順番でレポートにまとめています。
レポートに出てくる2つの用語を補足します。
PSSとBANTで商談を評価するプロンプトは、ChatGPT営業プロンプト10選でも紹介しています。
仕組みを作っても、現場で使われなければ成果にはつながりません。ここでは、支援先で議事録の運用を定着させるときに、私が気をつけていることを紹介します。
議事録をAIで作るには録音や録画があると便利ですが、私は全員に一律で導入することはしません。
私が支援する食品製造業の会社では、最初に、この3か月は録音を使わないと先に言い切りました。まずは手で書く運用を試し、それで回るなら、そのまま続けてもらいます。手入力がきついという声が現場から出てきたときに初めて録音を相談し、入れるかどうかは現場が決めます。
実際、最後まで録音を入れずに手入力で定着した会社もあれば、営業11名のうち希望した2名だけが録音を使っている会社もあります。全員に一律で録音を入れた会社は、ひとつもありません。
私は、録音することよりも、記録が正直であることのほうが大事だと考えています。
7-1のように手入力から始めるときは、入力にかかる負担を、ごまかさずに数字で伝えます。私が伝えているのは、次のような見積もりです。
ただし、私が目の前で実際にやって見せると、この3つの入力は3〜4分で終わります。最初に正直な見積もりを伝え、そのうえで実演して、見積もりより短く終わることを実際に見てもらうようにしています。
ドラッカーも『経営者の条件』で、成果をあげる人は、まず自分の時間の使い方を知ることから始めると説いています。入力にかかる時間を数字で示すのは、その第一歩でもあります。
最後に、私自身が経験した失敗と、そこから決めた注意点を紹介します。これからAI議事録を始める方は、ここを先に押さえておくと安心です。
私も、商談が終わったあとに録画を止め忘れたことがあります。お客様がオンライン会議から退出したあとも録画が続き、社内で話した戦略の会話(競合の評価や、クロージングの時期をどうするかなど)が、そのまま記録に残っていました。
議事録作成のために録画すると宣言している以上、この録画が共有されてしまえば、こちらの交渉戦略がお客様に伝わり、信頼を一度に失いかねません。
こうした操作のミスは、気をつけるだけでは防げません。そこで、お客様が退出したら、録画が止まっているかを必ず確かめる、という確認を、商談を終えるときの決まった手順に組み込んで防いでいます。
議事録をCRM(顧客管理システム)につなぐときにも、つまずいたことがあります。
自社では、顧客や商談の管理にHubSpotというCRMを使っています。HubSpotには、ミーティング(商談)の記録にコメント欄があります。
ここにAI議事録を自動で入れようとしたところ、HubSpotとGoogleカレンダーを同期している関係で、議事録が相手側にも送られてしまうリスクがあると分かりました。仕様上、この方法は使えません。
また、AI議事録ツールを経由してHubSpotに連携すると、同じ商談が別の記録として登録されます。その結果、月ごとのミーティング数を集計したときに、同じ商談が二重に数えられてしまいます。
そのため、当面はHubSpotへの登録を手作業で続けています。自動化は便利ですが、議事録をどこに出すのか、だれの目に触れるのかという出口を、先に設計してください。
HubSpotの活用例はHubSpotでサブスク売上管理を自動化する方法、ミーティング数などの行動量の管理はBtoB営業の行動量管理で紹介しています。
商談を録音・録画するときは、個人情報の扱いにも注意が必要です。氏名などから特定の個人が分かる音声は、個人情報に当たります(個人情報保護委員会のガイドライン)。
私は商談の場で、議事録作成のために録画することをお客様に伝えています。
また、文字起こしを生成AIに入れるときは、次の2点を確認しましょう(同委員会の注意喚起)。
商談議事録は、作って終わりにせず、提案書と商談レビューに使ってこそ価値が出ます。最後に、この記事のポイントを振り返ります。
まずは、直近の商談1件の文字起こしをAIに渡し、4項目の議事録を作ってみるところから始めてみてください。
Q1. 商談議事録をAIで作ると何が変わりますか?
A. 議事録が、作って終わりの記録から次の行動に使う材料に変わります。私は全商談の文字起こしをClaudeに読み込ませ、議事録づくり、提案書の初稿、商談の採点に使っています。提案書の初稿は約20分でできます。
Q2. 商談議事録には何を書けばいいですか?
A. 参加者、議題、協議内容・決定事項、ネクストアクションの4項目で十分です。各1〜3行で、合格ラインは10行。
ただし価格・数量・時期の数値と、断られた理由は必ず残します。失注分析と再提案の元データになるからです。
Q3. 商談議事録にはどのAIツールを使えばいいですか?
A. 私は録画の文字起こしにtl;dvなどのAI議事録ツールとZoom、議事録と提案書づくりにClaudeを使っています。支援先では、ボイスメモをGeminiで文字起こしする運用も入れています。ChatGPTやGeminiにも、プロジェクトやスキルなど同じ役割の機能があるので、同じ流れで使えます。
Q4. AIにすると作業時間はどれくらい減りますか?
A. 手入力では訪問1件あたり10分(議事録6分・訪問記録2分・商談管理2分)と見積もりますが、ボイスメモをAIに渡せば、議事録の骨格は約1分でできます。
Q5. AIが作った議事録はそのまま使えますか?
A. そのままは使いません。議事録にある事実だけを使い、数字はAIに作らせず、見立ては見立てと書きます。提案書にする前に、価格とプラン、仮定の数値、構成の3点を人が確認します。
Q6. AIで商談をレビューするときは何を見ればいいですか?
A. 毎週同じ5つの観点を見ます。発話比率、深掘り質問の回数、顧客の言葉の引用、競合への切り返し、次アクションの合意で、最初に見るのは発話比率です。観点を固定するから、商談同士を比べられます。
Q7. 録音・録画に現場が反対したらどうすればいいですか?
A. 無理に入れません。ある支援先では、最初の3か月は録音を使わないと先に宣言し、手入力で回しました。
手入力がきついという声が出たら録音を相談し、決めるのは現場です。記録が正直であることのほうが大事です。
Q8. 商談議事録AIで失敗しやすいことはありますか?
A. 録画の停止忘れです。お客様の退出後に、社内の戦略会話が録画に残ったことがあります。
CRM連携の方法によっては、議事録が相手に送られる仕様もあります。自動化の前に、議事録をどこに出すかを設計してください。
記事を書いたひと
株式会社マイノリティ 代表取締役
柳澤 大介
キーエンス初のインターネット事業「イプロス」では、4.3万社が参画する製造業向けプラットフォームの成長を牽引。メルペイで100名規模の営業組織を構築し、国内182万ヶ所の加盟店を開拓。スマートニュースで営業企画責任者を経て、2021年に株式会社マイノリティを創業。B2Bビジネスのマネタイズとグロースが専門。埼玉大学で「イノベーションとマーケティング講座」の講師。
■ 経歴
株式会社マイノリティ 代表取締役(2021/2〜現在)
https://minority.works/
株式会社ブランドファーマーズ・インク 代表取締役(2025/11〜現在)
https://brand-farmers.jp/
社長ラジオ株式会社 代表取締役(2026/4〜現在)
https://shachoradio.com/
■ メディア
X(旧Twitter):socialselling84
Udemy:法人営業の教科書
note:https://note.com/socialselling
Podcast番組:40’s Biztalk
Podcast番組:稼ぐ社長の脳内見学ツアー
運営メディア:ソーシャルセリング.com
運営コミュニティ:マイクロ法人・経営研究会