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【プロンプト付き】商談議事録をAIで作る方法|提案書と商談レビューまで回す実践フロー
営業 AI活用 最終更新日:2026.11.02

【プロンプト付き】商談議事録をAIで作る方法|提案書と商談レビューまで回す実践フロー

著者:柳澤大介(株式会社マイノリティ代表取締役)キーエンス・メルペイ・スマートニュースを経て、2021年2月にBtoB営業・マーケティングコンサルティング会社を創業。現在は大手〜中小企業の営業DX支援に携わりながら、Claude等の生成AIを日常的な業務に統合活用している。

この記事のポイント

  • 商談議事録をAIで作る全体の流れと、tl;dv・Zoom・Claudeを使った具体的な手順(ChatGPT・Geminiでの置き換え方も)
  • 議事録に残す4項目と、提案書につなげるAIへの抽出ルール、数字を作らせない確認方法
  • 初回商談の4日後に30枚の提案書を出した実案件の流れと、議事録に残った数字
  • 週30分で回すAI商談レビューの5つの観点(プロンプト実物)とレポートの型
  • 録音を現場に定着させる進め方と、録画の停止忘れなど実際に起きた失敗
     

目次

  • 1.はじめに
  • 2.商談議事録をAIで作るメリットと仕組み
    • 2-1. AIでできることと3つの使い道
    • 2-2. 手書きの議事録が続かない理由
    • 2-3. AI議事録ツールを選ぶときに確かめること
  • 3.商談議事録AIの実践フロー|tl;dv×Claudeの使い方
    • 3-1. 全商談を録画して文字起こしする
    • 3-2. Claudeのプロジェクトで議事録を自動で作る
    • 3-3. 議事録から提案書の初稿を約20分で作る
    • 3-4. 【補足】ChatGPTやGeminiでも同じ流れで使える
  • 4.AI議事録に残す4項目と抽出ルール
    • 4-1. 商談の議事録は4項目・10行で十分
    • 4-2. 提案書につなげるAIへの抽出項目
    • 4-3. AIに数字を作らせないルールと確認ゲート
  • 5.【実例】初回商談から4日で提案書を作った流れ
    • 5-1. 45分の初回商談で議事録に残った数字
    • 5-2. 議事録から30枚の提案書と費用対効果を作る
  • 6.柳澤大介流|週30分のAI商談レビュー【プロンプト実物】
    • 6-1. AIレビューの4工程と事前準備
    • 6-2. 商談の文字起こしを分析する5つの観点
    • 6-3. マネージャーに渡すレポートの型
  • 7.商談議事録AIを現場に定着させる進め方
    • 7-1. 録音は全員一律に入れない
    • 7-2. 入力の負担は数字で正直に伝える
  • 8.AI議事録で実際に起きた失敗と注意点
    • 8-1. 録画の停止忘れで社内の会話が残った
    • 8-2. CRM連携は出口から設計する
    • 8-3. 録音の同意と顧客情報の取り扱い
  • 9.まとめ
  • 10.商談議事録のAI活用に関するよくある質問(Q&A)
  • 参考文献

1.はじめに

商談のたびに議事録を書いても、あとから読み返されず、次の提案にも使われない。そんな営業組織は少なくありません。時間をかけて書いた議事録が、そのまま眠ってしまうのはもったいないことです。

私はキーエンスグループで営業を経験し、いまはBtoB企業の営業組織づくりを支援しています。自社では、すべての商談を録画して文字起こし(録音した会話を、文字のデータにすること)を行い、そのテキストを生成AIのClaudeに読み込ませています。

使い道は、次の3つです。

  1. 議事録づくり
  2. 提案書の初稿(最初のたたき台)づくり
  3. 商談の採点(AIによる振り返り)

たとえば提案書の初稿は、議事録をもとに約20分でできあがります。

この記事では、商談議事録をAIで作る方法を、AIを使い始めたばかりの方にも分かるように解説します。私が実際に使っている手順と、支援先で決めている運用ルールを、実物のプロンプト(AIへの指示文)や実際の案件の数字も交えて、順番に紹介します。説明はClaudeを例に進めますが、ChatGPTやGeminiなど、ほかの生成AIでも同じ流れで使えます(3-4で補足します)。

2.商談議事録をAIで作るメリットと仕組み

まずは、AIで議事録を作るとはどういうことか、基本から整理します。

2-1. AIでできることと3つの使い道

AI議事録とは、商談や会議での会話をAIが記録し、議事録の形にまとめてくれる仕組みです。AIが行うことは、大きく分けて次の3段階です。

  1. 録音・録画した会話を、文字のデータに起こす(文字起こし)
  2. だれが話したのかを見分ける(話者の区別)
  3. 文字起こしの中から、要点や決定事項を抜き出して整理する(要約)

商談中にメモを取り、あとで清書するという人の作業を、AIが代わりに引き受けてくれるイメージです。

こうしたAIの活用は、すでに多くの企業に広がっています。総務省の令和8年版 情報通信白書によると、業務で生成AIを使っている日本企業は86.4%(わからないと答えた企業を除く)。業務別では、議事録・メール作成補助での活用が約7割と最も多く、効果を実感している割合も約7割でした。

私は、この仕組みを議事録づくりだけで終わらせず、次の3つに使っています。

  • 議事録:商談の内容を4つの項目で整理する(4-1で解説)
  • 提案書の初稿:議事録の数字や顧客の言葉をもとに、提案書のたたき台を作る(3-3と5章で解説)
  • 商談の採点:商談のやり取りをAIに振り返らせ、改善点を見つける(6章で解説)

ここまで広げると、議事録は作って終わりの記録から、次の行動に使う材料に変わります。

2-2. 手書きの議事録が続かない理由

議事録を人の手で書いていると、忙しい週ほど記録が後回しになり、そのまま抜け落ちてしまいます。記録のない商談が増えると、あとで振り返りたいときに、データに穴が開いた状態になります。

私が支援している人材サービス会社でも、商談のボイスメモ(スマホでの録音)は残しているのに、CRM(顧客や商談の情報をまとめて管理するシステム)への入力が徹底されていませんでした。録音はあっても、あとで使える記録にはなっていなかったのです。

そもそも人の記憶は、時間とともに急速に薄れていきます。人が覚えたことをどれくらいの速さで忘れていくかは、エビングハウスの忘却曲線として知られています。記憶が新しいうちに記録を残すには、人の頑張りに頼らない仕組みが必要です。

そこで私は、議事録づくりやCRMへの記録といった商談後の作業を、データの分析よりも先に自動化するようにしています。記録がそろっていなければ、分析もできないからです。

記録を仕組みで残す考え方は、キーエンスの外報の仕組みを紹介した記事でも解説しています。

2-3. AI議事録ツールを選ぶときに確かめること

AI議事録ツールはたくさんありますが、この記事ではツール同士の比較はしません。代わりに、私の運用や失敗から、導入前に確かめておきたい点を4つにまとめました。

確かめることなぜ大事か記事内の実例
文字起こしを、ファイルとして書き出せるか書き出したファイルをClaudeなどの生成AIに渡せば、議事録だけでなく、提案書や商談の振り返りにも使い回せるため3-1
録画の開始と停止が、ひと目で分かるか止め忘れると、お客様の退出後の社内の会話まで記録に残るため8-1
CRMとつないだとき、議事録がどこに入るかつなぎ方によっては、議事録が相手に送られたり、同じ商談が二重に登録されたりするため8-2
入力したデータを、AIの学習に使われない設定にできるか商談の音声や文字起こしには、お客様の個人情報が含まれるため8-3

どれも、ツールの機能だけでなく、社内の運用ルールとあわせて確かめておくと安心です。

3.商談議事録AIの実践フロー|tl;dv×Claudeの使い方

ここからは、私が実際に使っている流れを紹介します。全体は次の3ステップです。

  1. 商談を録画して、文字起こしを用意する(3-1)
  2. 文字起こしをClaudeに渡して、議事録を作る(3-2)
  3. 議事録をもとに、提案書の初稿を作る(3-3)

主に使うツールは2つです。tl;dvは、オンライン商談を録画し、文字起こしまで自動で行うAI議事録ツールです。Claudeは、Anthropic社が開発した生成AIで、指示に応じて文章や資料を作ってくれます。

私は、議事録と提案書づくりをClaudeに任せています。Claudeの代わりにChatGPTやGeminiを使いたい方向けに、3-4で補足しています。

3-1. 全商談を録画して文字起こしする

最初のステップは、商談の会話を文字のデータにすることです。私は、すべての商談を録画し、tl;dvなどのAI議事録ツールで自動的に文字起こしをしています。(最近のお気に入りはCircleback)

Zoomで行った商談の場合は、Zoomが作る文字起こしのファイル(WebVTT形式※)を使います。このファイルをそのままClaudeなどの生成AIに渡せば、AIが商談の会話を読み取れる状態になります。

対面の商談など、録画しにくい場面もあります。その場合は、スマホのボイスメモで録音しておき、その音声ファイルを、音声を読み込めるAIに渡します。これだけで、約1分で議事録の骨格(たたき台)ができます。

私が支援している人材サービス会社では、もともと、ボイスメモは録っているのにCRMへの入力が進まないことが課題でした。そこで、音声をGemini(Googleの生成AI)で文字起こしする作業を、商談が終わった直後の5分で必ず行うルーティンに決めました。

なお、Geminiで文字起こしをする細かい手順は、この記事では割愛します。ポイントは、どのツールを使うかよりも、商談直後の5分のように時間を決めて、毎回同じように記録を残すことです。

※WebVTT形式(Web Video Text Tracks Format)は、Webサイト上の動画や音声に、字幕・キャプション・チャプター(章)などの情報を時間に合わせて表示するための標準的なテキストファイル形式です。ファイルの拡張子には「.vtt」が使用されます。

3-2. Claudeのプロジェクトで議事録を自動で作る

2つ目のステップは、文字起こしから議事録を作ることです。ここでは、Claudeのプロジェクトという機能を使っています。

Claudeのプロジェクトとは、テーマごとに用意できる作業部屋のようなものです。部屋の中に資料や指示をまとめて置いておけるので、毎回同じ説明をしなくても、AIが同じ前提で作業を進めてくれます(Claudeのヘルプ:プロジェクトとは)。

私は、議事録作成という名前のClaudeのプロジェクトを作り、議事録の作り方を、指示としてあらかじめ登録しています。使い方はシンプルで、商談の文字起こしファイル(VTTファイル)を1本入れるだけです。

ファイルを入れると、AIが登録しておいた指示に沿って、次の4項目で議事録を自動で作ります。

  • 参加者:商談に出席した人
  • 議題:何について話したか
  • 決定事項:商談で決まったこと
  • ネクストアクション:次に、だれが何をするか

できあがった議事録は、Googleドライブ(Googleのファイル保存サービス)に保存されるところまで自動で終わります。ClaudeとGoogleドライブを、あらかじめつないであるためです。

このつなぐ機能を、Claudeではコネクタと呼びます。設定方法は、この記事では割愛します。

このプロジェクトでは、議事録のあとに、3-3で紹介する提案書なども続けて作れます。5章で紹介する案件では、文字起こしファイル1本から、最終的に次の3種類のファイルができあがりました。

  • 議事録のファイル
  • 提案書のPowerPointファイル
  • Before/Afterの1枚資料(変化の前と後を1枚で比べる資料)

ほかのお客様との商談も同じプロジェクトに入れ、案件ごとに同じ流れで回しています。作り方を登録してあるので、毎回ゼロから指示を書く必要はありません。

3-3. 議事録から提案書の初稿を約20分で作る

3つ目のステップは、議事録をもとに提案書の初稿を作ることです。流れを分けると、次の3段階になります。

  1. 文字起こしから、顧客の課題、予算、売上や単価などの数字を抜き出す
  2. 過去に受注できた提案書をもとに、使い回せるスライドの部品(モジュール)を用意しておく
  3. 部品を組み合わせて、抜き出した内容を当てはめ、自社のテンプレートどおりのPowerPointに仕上げる

2の部品はあらかじめ用意しておき、1と3をClaudeが一気に進めます。人がスライドを一から作る必要はありません。

この仕組みは、外部のパートナー企業と一緒に検証しながら作りました。検証は、次の手順で進めました。

  1. 自社の既存の提案書2点をPDFにして、デザインのルール(トンマナ、フォント、レイアウトなど)を抜き出す
  2. 抜き出したルールを、デザインシステム.mdという1つのファイルにまとめる
  3. このファイルと、tl;dvで作った商談の文字起こしをClaudeに添付して、提案書を作るよう指示する

トンマナとは、トーン&マナーの略で、色づかいや表現など、資料全体の雰囲気をそろえるためのルールのことです。

デザインシステム.mdの.mdは、マークダウンという形式のテキストファイルです。見出しや箇条書きで文章の組み立てがはっきりするのでAIが読み取りやすく、どのAIにもそのまま渡せるため、AI時代にはかなり大事な形式です。

検証の結果、自社の提案書と同じトンマナ、フォント、レイアウトを守った提案書が、約20分でできあがりました。

とはいえ、毎回2つのファイルを添付するのは手間がかかります。そこでいまは、デザインのルールと提案の組み立て方(提案ロジック)を、Claudeのスキルという機能に登録しています。

スキルとは、特定の作業のやり方を、AIに登録しておける機能です。作業の指示や参考資料をひとまとめにして登録しておくと、AIが必要なときに読み込み、いつも同じやり方で作業を進めてくれます(Claudeのヘルプ:スキルとは)。スキルにしておけば、毎回ファイルを添付しなくても、同じ形式の提案書ができあがります。

提案書づくりには、自社で作ったスキルを使っています。スキルの名前は自分で決められるので、私たちはminutes-to-proposalと名付けました。Claudeに最初から用意されている機能の名前ではなく、あくまで自社で付けたオリジナルの名前です。

スキルは、Claudeだけの機能ではありません。ChatGPTやGeminiにも、同じスキルという名前の機能があります(3-4で補足します)。

なお、ここでできるのは、あくまで初稿です。数字や内容は、4-3で紹介するルールに沿って、人が確認してから仕上げます。

提案書づくりに使える個別のプロンプトはClaudeプロンプト集10選、編集しやすいスライドの作り方はAIスライド作成術で詳しく紹介しています。

3-4. 【補足】ChatGPTやGeminiでも同じ流れで使える

この項目は、Claude以外のAIで同じ流れを作りたい方に向けた補足です。Claudeを使う方は、読み飛ばして4章へ進んでください。

ここまで紹介した流れは、Claudeでなければできないものではありません。ChatGPTやGeminiにも、名前は違っても同じ役割の機能があります。ほかのAIで同じ流れを作るときは、機能の名前ではなく、次の3つの役割がそろうかを確かめてください。

  • 資料や指示を1か所にまとめておける(3-2のプロジェクトの役割)
  • 作業のやり方を登録して、毎回同じように進められる(3-3のスキルの役割)
  • Googleドライブなど、ふだん使っているサービスとつなげられる(3-2のコネクタの役割)

たとえばChatGPTには、同じプロジェクトという名前の機能があります。スキルという名前の機能も、ChatGPTとGeminiの両方にあります。

ただし、AIの機能は名前や使えるプランが変わりやすく、プランによっては使えない機能もあります。使い始める前に、各社の公式ヘルプ(ChatGPTのヘルプ、Geminiのヘルプ)で確認してください。

なお、6章で紹介する商談レビューのプロンプトは、どのAIでもそのまま使えます。

4.AI議事録に残す4項目と抽出ルール

AIに任せるとしても、議事録に何を残すか、提案書のために何を拾うかは、人があらかじめ決めておく必要があります。ここでは、実際に支援先で使っている議事録のテンプレートと、社内で決めている抽出のルールを紹介します。

4-1. 商談の議事録は4項目・10行で十分

私が支援先(食品製造業、人材サービス、中古PC販売)で使っている議事録のテンプレートは、次の4項目だけです。

  1. 参加者
  2. 議題
  3. 協議内容・決定事項
  4. ネクストアクション

書き方はとても簡単です。4つの見出しをコピーして貼り付け、その下に1〜3行ずつ書くだけ。きれいな文章にする必要も、清書する必要もありません。

合格ラインは10行、目安は20行前後です。

その日に話したテーマが多くても、主要なものを2〜3本に絞って構いません。ただし、次の2つだけは必ず残してください。

  • ロット(発注の単位となる数量)、価格、時期などの数値
  • 断られた理由、見送られた理由

この2つは、受注できなかった理由を分析する失注分析や、あとで改めて提案する再提案の元データになるからです。

そのままコピーして使えるテンプレートは、次のとおりです。かっこの中を、その日の内容に書き換えてください。

## 参加者
(先方と自社の出席者)
## 議題
(何について話したか)
## 協議内容・決定事項
(決まったこと。ロット・価格・時期などの数値と、断られた理由は必ず残す)
## ネクストアクション
(だれが、いつまでに、何をするか)

4-2. 提案書につなげるAIへの抽出項目

議事録から提案書を作るときは、要点をまとめたものではなく、議事録(文字起こし)の全文をAIに読ませています。課題を表す生の言葉、予算についてのひと言、相手の会社の褒めどころ(強み)は、商談の終盤の雑談で出てくることが多いからです。要点だけを渡すと、こうした大事な情報が抜け落ち、提案の精度が下がります。

では、全文から何を抜き出すのか。それを決めているのが、社内の議事録分析プレイブックです。

プレイブックとは、仕事の進め方や判断の基準をまとめた社内の手引き(マニュアル)のことです。もとはアメリカンフットボールの作戦集を指す言葉です。

私の会社では、議事録の全文から、どの項目を、どのように抜き出すかを、このプレイブックに決めています。AIに作業させるたびに、同じ項目を漏れなく拾えるようにするためです。

抜き出している項目は、次の7つです。

項目抜き出す内容
基本情報正式な社名、出席者と決裁への距離(最終的な決定にどれだけ関わる人か)、紹介元と商談に至った経緯
事業の現状商材・単価・粗利(売上から原価を引いた利益)、売上規模、社内の体制と社長への依存度、使っている管理ツール
課題顧客が自分の言葉で語った表現をそのまま残す(例:予実が闇の中、言った言わない、良い話しか上がってこない)
目標・数字商談で出た数字と、出なかった数字を分けて記録する
予算・契約条件100万ぐらい、3か月で型を作りたい、伴走型は希望しない、などの発言
強み・褒めどころ提案書で伝える、相手の会社の強み
副次ニーズ採用難や知名度など、本題以外の困りごと。別のサービスもあわせて提案(クロスセル)できるかの判断に使う

課題の例にある予実が闇の中とは、予算と実績の状況が見えていない、という意味の顧客の言葉です。こうした言い回しは要約せず、そのまま残します。

また、商談で出なかった数字は、AIに推測で埋めさせません。詳しくは次の4-3で説明します。

4-3. AIに数字を作らせないルールと確認ゲート

AIで提案書を作るときに、私が一番大事にしているルールがあります。それは、議事録に書かれている事実だけを実績や現状として書き、数字を作らないことです。

生成AIは、事実ではない情報を、もっともらしく作ってしまうことがあります。これはハルシネーションと呼ばれます。国のAI事業者ガイドラインも、AIを使う場面で、人の判断を挟む使い方を検討するよう求めています。

そこで私は、次のように書き分けるルールにしています。

  • 議事録にある事実:そのまま実績や現状として書く
  • 私たちの推測:見立てであることを明記する
  • 仮に置いた数字:実数をいただければ差し替える旨を、脚注に書く

さらに、AIに提案書を作らせる前に、確認ゲート(先へ進む前に人が確認するチェックポイント)を設けています。確認するのは次の3点です。

  1. 価格とプランの形式
  2. 仮に置いた数字
  3. 提案書の構成

この3点を人が確認してから、AIに提案書を作らせます。確認なしで完成品を出すことはしません。

5.【実例】初回商談から4日で提案書を作った流れ

ここからは、3章と4章で紹介した流れを、実際の商談でどう使ったのかを紹介します。

5-1. 45分の初回商談で議事録に残った数字

2026年8〜9月に私が担当した実案件です(社名・人名は伏せています)。

クライアント企業では、社長が営業の7〜8割を担い、売上の8割は大手企業からの下請け(大手企業から仕事を請け負う形)でした。最大の課題は、社長が持っている営業のノウハウを、社員にどう伝えればよいか分からないことでした。

45分のZoom商談を文字起こしして、3-2のプロジェクトで議事録を作りました。その議事録には、次のような数字が残りました。

項目議事録に残った数字
粗利率下請けXX%、元請け約XX%
平均受注単価XXXX万〜XXXX万円
売上構成下請けX割、元請けX割
目標3年後に売上X億円、5年後に元請け比率XX%
次回商談9/10

※具体的な数字は伏せています。

元請け(発注者から直接仕事を受ける立場)と下請けでは、利益の出方が変わります。こうした数字が議事録にそのまま残っていることが、次の提案書づくりの土台になります。

5-2. 議事録から30枚の提案書と費用対効果を作る

この議事録をもとに、3-3で紹介したスキルを使って提案書を作りました。商談から4日後の8/31には30枚の初稿ができあがり、9/10の次回商談で提示しています。

提案書の構成は、以下のとおりです。

  • 「前回の振り返り」
  • 「解くべき3つの論点」
  • 「貴社の強み」
  • 「ゴール」
  • 「提案の全体像」
  • 「提案3本」
  • 「進め方3プラン」
  • 「料金」
  • 「費用対効果」
  • 「支援実績」
  • 「メンバー」

「解くべき3つの論点」のページには、商談で顧客が話した次の3つの言葉を、そのまま使いました。

  1. 見よう見まねの営業を社員に移せない
  2. エンド顧客になかなか響かない
  3. 名刺と商談情報は社長の頭の中で共有は口頭のみ

4-2で紹介した、顧客の生の言葉をそのまま残すルールが、ここで生きています。

「費用対効果のページ」は、議事録の数字から自動で計算しています。費用対効果のページとは、支援にかかる費用に対して、どれくらいの受注があれば元が取れるのかを示すページです。

計算には、議事録に残った単価や粗利率をそのまま使います。足りない数字を仮に置いた場合は、実数をいただければ差し替える旨を脚注に入れています。4-3で紹介した、数字を作らないルールの実践です。

6.柳澤大介流|週30分のAI商談レビュー【プロンプト実物】

文字起こしは、議事録や提案書だけでなく、商談そのものの振り返りにも使えます。ここでは、私が毎週行っている、AIを使った商談レビューを紹介します。

6-1. AIレビューの4工程と事前準備

私がセミナーなどの登壇でも紹介している手順は、次の4工程です。

  1. 録画と文字起こし(自動):3-1の方法で、商談を文字のデータにする
  2. AIレビュー(自動):決まった観点で、AIに商談を分析させる(6-2で紹介)
  3. 差分の発見(人):AIの分析結果から、改善すべきポイントを人が見つける
  4. 型への反映(人):見つけた改善点を、営業スクリプトなどの型に反映する

このうち、1つ目(録画と文字起こし)と2つ目(AIレビュー)は、AIが自動で進めます。人がやるのは、3つ目(差分の発見)と4つ目(型への反映)の判断だけです。だから週30分で回り、無理なく続けられます。

レビューを始める前に、準備がひとつあります。自社の提案書をAIに読み込ませ、どんなサービスを、どんな価値として、どんな顧客に届けているのかを理解させておくことです。

この準備を飛ばすと、AIは自社の状況をふまえない一般論しか返しません。3-2で紹介したプロジェクトに、提案書を資料として入れておけば、毎回読み込ませる必要はありません。

また、レビューはすべての商談では行いません。対象は、勝ち商談と接戦(勝ったものの危なかった案件と、惜しくも負けた案件)に絞り、週2〜3件を見ています。会議での回し方は営業会議の進め方で解説しています。

6-2. 商談の文字起こしを分析する5つの観点

私は毎週、次のプロンプトで商談の文字起こしを分析させています。使い方は、このプロンプトと一緒に商談の文字起こしを貼り付けるか、文字起こしのファイルを添付して、Claudeに渡すだけです。ChatGPTやGeminiでも、同じプロンプトをそのまま使えます。

以下の商談の文字起こしを、次の5つの観点で分析して、最後に、改善点を3つ挙げてください。  

  1. 顧客と営業の発話比率は何対何か  
  2. 課題を深掘りする質問は何回あったか  
  3. 顧客の言葉で課題や期待が語られた箇所の引用  
  4. 競合や比較対象への言及と、その時の切り返し  
  5. 次のアクションは明確に合意されたか

最初に見るのは発話比率です。発話比率とは、商談の中で、顧客と営業がそれぞれどれくらい話したかの割合のことです。

運用のポイントは、次の3つです。

  • 観点を毎週変えない(同じ観点で見るので、商談同士を比べられる)
  • 要約ではなく原文を引用させる(顧客の言葉が、そのまま資産として貯まる)
  • 改善点は3つまでにする(多すぎると、現場が動けない)

AIが挙げた改善点をもとに、人が差分を見つけて、営業スクリプトなどの型に反映します。差分とは、うまくいった商談と、そうでなかった商談を同じ観点で比べたときの違いのことです。営業スクリプトとは、商談の流れや質問、切り返しのトークをまとめた台本です。

反映のしかたは、たとえば次の3ステップです。

  1. 差分を書き出す:AIの分析結果を見比べて、勝ち商談にあって、負けた商談にはないものを1つずつ書き出します(例:勝ち商談では、予算の話をする前に、課題を深掘りする質問を何度もしていた)
  2. スクリプトに書き足す:営業スクリプトのうち、その差分に関わる場面(課題を聞く場面、競合の話が出た場面など)に、質問やトークを書き足します
  3. 次の週の商談で試す:書き足したスクリプトで商談をして、翌週のレビューで同じ観点を見て、変化を確かめます

スクリプトの書き足しは、AIに手伝ってもらうこともできます。たとえば、次のように頼みます。

添付の営業スクリプトに、次の改善点を反映した修正案を作ってください。変えた箇所が分かるように示してください。(ここに改善点を貼り付ける)

AIが作るのは、あくまで修正案です。どの改善点をスクリプトに入れるかは、人が決めます。AIで営業スクリプトを作る手順は、AIで営業スクリプトを自動生成する方法で紹介しています。

トップ営業の型をAIで広げた事例は、インサイドセールスのAI効率化マニュアルで紹介しています。

6-3. マネージャーに渡すレポートの型

私の支援先では、AIレビューの結果を、次の順番でレポートにまとめています。

  1. 商談サマリー(お客様、出席者、商談種別、獲得した前進)
  2. 総評
  3. PSSの観点ごとの評価(◎◯△と、良かった点・改善点)
  4. BANTの把握表(把握できたこと/不足していて次回確認すること)
  5. 次回までのアクション
  6. マネージャーからの一言

レポートに出てくる2つの用語を補足します。

  • PSS(Professional Selling Skills):営業の進め方を段階ごとに整理した型です。商談の導入(オープニング)、質問で課題を探る(プロービング)、解決策を示す(サポーティング)、合意をとる(クロージング)といった段階ごとに、商談の進め方を評価します。
  • BANT:商談で確認すべき4つの項目の頭文字です。Budget(予算)、Authority(決裁権)、Need(必要性)、Timeframe(導入時期)を指します。

PSSとBANTで商談を評価するプロンプトは、ChatGPT営業プロンプト10選でも紹介しています。

7.商談議事録AIを現場に定着させる進め方

仕組みを作っても、現場で使われなければ成果にはつながりません。ここでは、支援先で議事録の運用を定着させるときに、私が気をつけていることを紹介します。

7-1. 録音は全員一律に入れない

議事録をAIで作るには録音や録画があると便利ですが、私は全員に一律で導入することはしません。

私が支援する食品製造業の会社では、最初に、この3か月は録音を使わないと先に言い切りました。まずは手で書く運用を試し、それで回るなら、そのまま続けてもらいます。手入力がきついという声が現場から出てきたときに初めて録音を相談し、入れるかどうかは現場が決めます。

実際、最後まで録音を入れずに手入力で定着した会社もあれば、営業11名のうち希望した2名だけが録音を使っている会社もあります。全員に一律で録音を入れた会社は、ひとつもありません。

私は、録音することよりも、記録が正直であることのほうが大事だと考えています。

7-2. 入力の負担は数字で正直に伝える

7-1のように手入力から始めるときは、入力にかかる負担を、ごまかさずに数字で伝えます。私が伝えているのは、次のような見積もりです。

  • 訪問1件あたりの入力は10分。内訳は、議事録6分、訪問記録(いつ、どこを訪問したかの記録)2分、商談管理(商談の進み具合の更新)2分
  • 月20訪問なら、月に3時間ちょっと作業が増える

ただし、私が目の前で実際にやって見せると、この3つの入力は3〜4分で終わります。最初に正直な見積もりを伝え、そのうえで実演して、見積もりより短く終わることを実際に見てもらうようにしています。

ドラッカーも『経営者の条件』で、成果をあげる人は、まず自分の時間の使い方を知ることから始めると説いています。入力にかかる時間を数字で示すのは、その第一歩でもあります。

8.AI議事録で実際に起きた失敗と注意点

最後に、私自身が経験した失敗と、そこから決めた注意点を紹介します。これからAI議事録を始める方は、ここを先に押さえておくと安心です。

8-1. 録画の停止忘れで社内の会話が残った

私も、商談が終わったあとに録画を止め忘れたことがあります。お客様がオンライン会議から退出したあとも録画が続き、社内で話した戦略の会話(競合の評価や、クロージングの時期をどうするかなど)が、そのまま記録に残っていました。

議事録作成のために録画すると宣言している以上、この録画が共有されてしまえば、こちらの交渉戦略がお客様に伝わり、信頼を一度に失いかねません。

こうした操作のミスは、気をつけるだけでは防げません。そこで、お客様が退出したら、録画が止まっているかを必ず確かめる、という確認を、商談を終えるときの決まった手順に組み込んで防いでいます。

8-2. CRM連携は出口から設計する

議事録をCRM(顧客管理システム)につなぐときにも、つまずいたことがあります。

自社では、顧客や商談の管理にHubSpotというCRMを使っています。HubSpotには、ミーティング(商談)の記録にコメント欄があります。

ここにAI議事録を自動で入れようとしたところ、HubSpotとGoogleカレンダーを同期している関係で、議事録が相手側にも送られてしまうリスクがあると分かりました。仕様上、この方法は使えません。

また、AI議事録ツールを経由してHubSpotに連携すると、同じ商談が別の記録として登録されます。その結果、月ごとのミーティング数を集計したときに、同じ商談が二重に数えられてしまいます。

そのため、当面はHubSpotへの登録を手作業で続けています。自動化は便利ですが、議事録をどこに出すのか、だれの目に触れるのかという出口を、先に設計してください。

HubSpotの活用例はHubSpotでサブスク売上管理を自動化する方法、ミーティング数などの行動量の管理はBtoB営業の行動量管理で紹介しています。

8-3. 録音の同意と顧客情報の取り扱い

商談を録音・録画するときは、個人情報の扱いにも注意が必要です。氏名などから特定の個人が分かる音声は、個人情報に当たります(個人情報保護委員会のガイドライン)。

私は商談の場で、議事録作成のために録画することをお客様に伝えています。

また、文字起こしを生成AIに入れるときは、次の2点を確認しましょう(同委員会の注意喚起)。

  • 個人情報を使う目的(利用目的)の範囲内か
  • 入力したデータが、AIの学習に使われない設定になっているか

9.まとめ

商談議事録は、作って終わりにせず、提案書と商談レビューに使ってこそ価値が出ます。最後に、この記事のポイントを振り返ります。
 

  • 議事録は4項目で十分。ただし、数値と断られた理由は必ず残す
  • AIには議事録(文字起こし)の全文を読ませ、数字は作らせない。提案書は人が確認してから仕上げる
  • 商談レビューは週30分。勝ち商談と接戦の週2〜3件に絞る
  • 録音は全員一律に入れず、入れるかどうかは現場が決める
  • 自動化の前に、議事録をどこに出すかという出口を設計する

まずは、直近の商談1件の文字起こしをAIに渡し、4項目の議事録を作ってみるところから始めてみてください。

10.商談議事録のAI活用に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 商談議事録をAIで作ると何が変わりますか?

A. 議事録が、作って終わりの記録から次の行動に使う材料に変わります。私は全商談の文字起こしをClaudeに読み込ませ、議事録づくり、提案書の初稿、商談の採点に使っています。提案書の初稿は約20分でできます。

Q2. 商談議事録には何を書けばいいですか?

A. 参加者、議題、協議内容・決定事項、ネクストアクションの4項目で十分です。各1〜3行で、合格ラインは10行。

ただし価格・数量・時期の数値と、断られた理由は必ず残します。失注分析と再提案の元データになるからです。

Q3. 商談議事録にはどのAIツールを使えばいいですか?

A. 私は録画の文字起こしにtl;dvなどのAI議事録ツールとZoom、議事録と提案書づくりにClaudeを使っています。支援先では、ボイスメモをGeminiで文字起こしする運用も入れています。ChatGPTやGeminiにも、プロジェクトやスキルなど同じ役割の機能があるので、同じ流れで使えます。

Q4. AIにすると作業時間はどれくらい減りますか?

A. 手入力では訪問1件あたり10分(議事録6分・訪問記録2分・商談管理2分)と見積もりますが、ボイスメモをAIに渡せば、議事録の骨格は約1分でできます。

Q5. AIが作った議事録はそのまま使えますか?

A. そのままは使いません。議事録にある事実だけを使い、数字はAIに作らせず、見立ては見立てと書きます。提案書にする前に、価格とプラン、仮定の数値、構成の3点を人が確認します。

Q6. AIで商談をレビューするときは何を見ればいいですか?

A. 毎週同じ5つの観点を見ます。発話比率、深掘り質問の回数、顧客の言葉の引用、競合への切り返し、次アクションの合意で、最初に見るのは発話比率です。観点を固定するから、商談同士を比べられます。

Q7. 録音・録画に現場が反対したらどうすればいいですか?

A. 無理に入れません。ある支援先では、最初の3か月は録音を使わないと先に宣言し、手入力で回しました。

手入力がきついという声が出たら録音を相談し、決めるのは現場です。記録が正直であることのほうが大事です。

Q8. 商談議事録AIで失敗しやすいことはありますか?

A. 録画の停止忘れです。お客様の退出後に、社内の戦略会話が録画に残ったことがあります。

CRM連携の方法によっては、議事録が相手に送られる仕様もあります。自動化の前に、議事録をどこに出すかを設計してください。
 

参考文献

  • 総務省 令和8年版 情報通信白書(生成AIの業務利用状況)
  • 総務省 令和6年版 情報通信白書(生成AIが抱える課題)
  • 総務省・経済産業省 AI事業者ガイドライン(第1.2版)
  • 個人情報保護委員会 ガイドライン(通則編)
  • 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起
  • P.F.ドラッカー『経営者の条件』ダイヤモンド社

  
記事を書いたひと



株式会社マイノリティ 代表取締役

柳澤 大介

キーエンス初のインターネット事業「イプロス」では、4.3万社が参画する製造業向けプラットフォームの成長を牽引。メルペイで100名規模の営業組織を構築し、国内182万ヶ所の加盟店を開拓。スマートニュースで営業企画責任者を経て、2021年に株式会社マイノリティを創業。B2Bビジネスのマネタイズとグロースが専門。埼玉大学で「イノベーションとマーケティング講座」の講師。

■ 経歴
株式会社マイノリティ 代表取締役(2021/2〜現在)
https://minority.works/

株式会社ブランドファーマーズ・インク 代表取締役(2025/11〜現在)
https://brand-farmers.jp/

社長ラジオ株式会社 代表取締役(2026/4〜現在)
https://shachoradio.com/

■ メディア
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運営メディア:ソーシャルセリング.com

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