著者:柳澤大介(株式会社マイノリティ 代表取締役) キーエンス・メルカリ・スマートニュースを経て、2021年2月にBtoB営業・マーケティングコンサルティング会社を創業。現在は大手〜中小企業の営業DX支援に携わりながら、Claude等の生成AIを日常的な業務に活用している。
目次
正直に言うと、私がClaudeを本格的に営業資料作成に使い始めた当初、出力品質に半信半疑だった。
しかし実際に使い続けるうちに、「構成力」と「論理展開」においてはClaudeが他の生成AIより圧倒的に優れていると確信するようになった。ChatGPTが「流暢な文章を書く」のに長けているとすれば、Claudeは「論理を組み立てる」のが得意だ。営業資料に必要なのはまさに後者である。
本記事では、私が実際のクライアントワークやマイノリティ社内の業務で使っているClaudeプロンプトを10個に厳選して公開する。
すべて「コピペして即使える」レベルに整えた。ご自身の商材・業種に合わせて【 】内を差し替えるだけで業務で活用できる。
また当記事はあくまで営業向けの記事として用意した。非エンジニアであり、難しいプログラミング等は苦手な読者を想定している。そのため、敢えてClaude codeやClaude cowork、skills等にも言及せず、基本のチャット機能のみで使用できるようにした。(もちろん使える方は活用いただいて構わない)
プロンプトの紹介に入る前に、私が重視している設計原則を3点だけ伝えたい。
① 「役割(Role)」を最初に与える Claudeは役割を与えることで出力トーンと思考深度が大きく変わる。「BtoB営業のベテランコンサルタントとして」と冒頭に書くだけで、出てくる構成の質が変わる。
② 「制約条件」を具体的に書く 「簡潔に」ではなく「1スライドあたり本文3行以内」。「わかりやすく」ではなく「専門用語を使わず、中学生でも理解できる言葉で」。具体性がClaudeの精度を決める。
③ 「アウトプット形式」を明示する 「表形式で出力してください」「マークダウンで出してください」など、最後に出力形式を指定すると後工程が楽になる。
では、実際のプロンプトを見ていこう。
使いどころ: 新規商談前、初めて提案する業種・企業規模の案件
あなたはBtoB営業の提案書設計を専門とするコンサルタントです。
以下の条件に基づき、営業提案書の全体構成案を作成してください。
【商材・サービス名】:
【提案先企業の業種】:
【提案先企業の規模(従業員数・売上規模)】:
【提案先のキーマン(役職)】:
【想定している顧客課題】:
【自社サービスの強み(競合との差異)】:
【商談フェーズ】:(例:初回提案 / 2回目以降の深掘り / クロージング前)
出力形式:
– スライド枚数:8〜10枚を想定
– 各スライドに「タイトル」「伝えたいメッセージ1行」「含める要素(箇条書き3点)」を記載
– 最後に「この構成にした理由(100字)」を付記すること
私の実務メモ: キーエンス時代に叩き込まれた「外報スタイル」(商談後の報告書)を踏まえると、顧客の課題→示した解決策→次のアクション、という流れが最も成約率と相関している。この構成をClaudeに学習させることで、再現性の高い提案骨子が出てくる。
使いどころ: 商談後のメモ・録音文字起こしを資料に落とし込む場面
あなたはBtoB営業コンサルタントです。
以下の商談メモをもとに、提案書で使えるスライド原稿を作成してください。
【商談メモ(そのまま貼り付けてください)】:
(例:「物流コストが前年比20%増。特に在庫管理に課題。システムは5年前のもの。意思決定者は社長ではなく専務。来月末に予算会議がある。」)
出力条件:
– 各スライドの「見出し」と「本文(3行以内)」を出力
– 顧客の言葉(課題・感情)を活かしたストーリーラインにすること
– 「なぜ今動くべきか」が伝わるスライドを必ず含めること
– 専門用語は使わず、決裁者が直感的に理解できる表現にすること
私の実務メモ: 商談メモをClaudeに渡すとき、精度を上げるコツは「録画後の文字起こしをそのまま貼る」こと。編集しない生の言葉の中に、顧客が本当に気にしていることが出てくる。Claudeはその中から重要な課題ワードを自動で拾い上げて構成に反映してくれる。
使いどころ: 「他社と比べてどうなの?」と聞かれる場面、差別化を可視化したいとき
あなたはBtoB営業の競合分析を専門とするコンサルタントです。
以下の情報をもとに、競合比較スライドの原稿を作成してください。
【自社サービス名と強み3点】:
【比較対象の競合(2〜3社)】:
【想定している顧客の重視軸(例:コスト・導入スピード・サポート体制)】:
【自社が最も優位な軸】:
出力形式:
– 比較表(5軸以上)をマークダウンの表形式で出力
– 各軸に「自社の評価コメント(一言)」を追加
– 比較表の下に「なぜ自社を選ぶべきか」の結論文を100字で記載
– 注意:自社を過度に美化せず、中立的かつ信頼性のある比較にすること
私の実務メモ: 競合比較は「正直に作ると信頼される」。自社が劣る軸を隠すと、商談中に突かれたとき崩れる。あえて「この部分は競合が強い。ただし我々は〇〇で補っている」という誠実な構成の方が成約率が高い。Claudeはそのバランスを取るのが得意だ。
使いどころ: 稟議通過を支援したい場面、決裁者向けに数字で語りたいとき
あなたは投資対効果(ROI)の計算と可視化を専門とするビジネスアナリストです。
以下の情報をもとに、「導入効果の試算スライド」の原稿を作成してください。
【サービス・ツールの月額費用】:
【対象業務の現状(例:月に何時間・何人が対応しているか)】:
【削減想定(例:作業時間を何%削減できるか)】:
【その他の定性的効果(例:属人化解消・品質均一化など)】:
【業種・規模(参照するために)】:
出力形式:
– 「現状コスト試算」「削減後コスト試算」「年間削減効果」を表で整理
– 定性効果を3点箇条書きで追加
– 「投資回収期間の目安」を一文で記載
– 前提条件を明記し、過大な訴求にならないよう留意すること
私の実務メモ: BtoBの稟議で最も強いのは「数字」だ。「便利になります」では通らない。「年間〇〇万円のコスト削減、回収期間〇ヶ月」という試算があると、担当者が社内を説得しやすくなる。私はこのプロンプトで出した試算をベースに、クライアントの稟議資料用の数値スライドを何十枚も作ってきた。
使いどころ: ターゲット業種の未知顧客にアプローチする前の仮説設計
あなたはBtoB営業の顧客課題分析を専門とするコンサルタントです。
以下の業種・規模の企業が抱えていると推測される「営業・マーケティング上の課題」を、仮説として整理してください。
【業種】:
【企業規模(従業員数・売上規模)】:
【想定キーマン(役職)】:
出力形式:
– 課題を「顕在課題(本人が認識している)」と「潜在課題(まだ言語化されていない)」に分けて各3点ずつ
– 各課題に「背景となる業界環境(1行)」を付記
– 最後に「この顧客への最初の問いかけ例(2〜3パターン)」を記載
私の実務メモ: これは私がABS(アカウントベースドソーシャルセリング)で実践している手法をClaudeに落とし込んだプロンプトだ。ターゲット企業のことを「仮説ファースト」で理解してから接触すると、最初のメッセージの精度が段違いに上がる。
使いどころ: 既存顧客の成功事例を提案資料用に整理したいとき
あなたはBtoB向けの導入事例コンテンツを専門とするライターです。
以下の情報をもとに、営業提案書に使える「導入事例スライド」の原稿を作成してください。
【顧客企業の業種・規模】:
【導入前の課題】:
【導入したサービス・取り組み内容】:
【導入後の成果(数値があれば含める)】:
【顧客の声(あれば)】:
出力形式:
– 「Before → Process → After」の3パート構成
– 各パート2〜3行で簡潔に
– 数値効果を太字で強調(マークダウン形式)
– 最後に「この事例から見えるポイント(読み手へのインサイト)」を1行で追加
私の実務メモ: 事例スライドは「自慢話」に見えると逆効果になる。大切なのは「この事例、自社にも当てはまるかも」と読み手が感じる構成だ。「Before → Process → After」の流れに加え、「なぜこの顧客がうまくいったか」の再現性ポイントを必ず入れることがコツ。
使いどころ: 作りかけの資料をClaudeに見せてフィードバックをもらいたいとき
あなたはBtoB営業提案書のプロフェッショナルレビュアーです。
以下のスライド原稿を読んで、改善点をフィードバックしてください。
【スライド原稿(テキストで貼り付けてください)】:
レビュー観点:
1. 「顧客目線」:顧客の課題・感情から書かれているか、自社都合になっていないか
2. 「論理構造」:結論→根拠→具体例の流れになっているか
3. 「簡潔性」:1スライドに情報を詰め込みすぎていないか
4. 「行動喚起」:読み手が「次に何をすればいいか」が明確か
出力形式:
– 各観点に「評価(◎/〇/△)」と「改善提案(1〜2行)」を記載
– 最後に「このスライドで最も改善効果の高い1点」を明示
私の実務メモ: 私はクライアントの提案資料を週に何十枚も目にするが、最も多い失敗パターンは「自社目線の資料」だ。「弊社は〇〇年の歴史があり……」から始まる会社紹介スライドは、顧客には何も伝わらない。Claudeにこのレビュープロンプトを使わせると、その問題を的確に指摘してくれる。
使いどころ: 商談直後に提案書と一緒にメールを送る場面
あなたはBtoB営業のプロフェッショナルです。
以下の情報をもとに、商談後の「提案書送付メール」を作成してください。
【商談相手の氏名・役職・会社名】:
【商談で確認できた主な課題】:
【提案したサービス・内容の要点】:
【商談で合意した次のアクション】:
【送付する提案書のタイトル】:
出力条件:
– 件名を3パターン提案すること(A/Bテストできるよう)
– 本文は400字以内、ビジネスメールらしい丁寧さを保ちつつ読みやすく
– 「顧客課題への共感」→「提案内容の要点(1行)」→「次のアクション明記」の構成
– 押しつけがましくならず、次のステップに自然に誘導すること
私の実務メモ: 件名を3パターン出させているのには理由がある。私の経験上、「件名のA/Bテスト」を意識しているBtoB営業担当者はほとんどいない。しかし件名一つで開封率は2〜3倍変わる。Claudeに複数パターン出させ、状況に合ったものを選ぶ習慣をつけると成果が変わる。
使いどころ: 商談前の準備、社内研修資料作成、提案書の補足資料として
あなたはBtoB営業の商談対策を専門とするコーチです。
以下の商材・サービスについて、顧客から受けやすい「反論・懸念・質問」とその回答集を作成してください。
【商材・サービス名と概要】:
【提案先の業種・規模】:
【過去に受けた反論・懸念(あれば)】:
出力形式:
– 質問・反論を「価格」「導入リスク」「社内調整」「競合比較」「効果の確証」の5カテゴリで各2〜3問
– 各質問に「推奨回答(150字以内)」を付記
– 推奨回答には「共感→事実→提案」の構成を意識すること
– 最後に「この商材で最も頻出しやすい反論TOP3」をランキング形式で出すこと
私の実務メモ: PSS(Professional Selling Skills)のフレームワークでは、反論処理は「否定せず共感し、事実で返す」が基本だ。このプロンプトで出したFAQ集は、クライアントの営業研修資料としてそのまま活用できるレベルのものが出てくる。
使いどころ: 多忙な決裁者向けのエグゼクティブサマリー、社内稟議の添付資料
あなたはコンサルティングファームのシニアコンサルタントです。
以下の提案書(または箇条書きの情報)を、決裁者向けの「1枚サマリー」に圧縮してください。
【提案書の内容(テキストで貼り付けてください)】:
【読み手の役職・決裁権限】:
【期待する読み手のアクション(例:承認・次回商談の設定)】:
出力形式:
– 全体を400字以内に収めること
– 「課題(現状)」「解決策(提案)」「期待効果(数値)」「必要なアクション」の4ブロック構成
– 各ブロックは2〜3行以内
– 専門用語・社内略語は使わない
– 最後に「このサマリーを渡すタイミングの推奨(一言)」を追記
私の実務メモ: 日本のBtoB商談では「デシジョンメーカーに資料が届かない」という問題が頻発する。担当者が持ち帰った30枚の提案書は、忙しい役員には読まれない。1枚サマリーを別途用意しておくと、「社内で稟議を回すときに使えます」と渡せる。これだけで商談の進みが変わる。
ここまで10個のプロンプトを紹介してきた。
これらのプロンプトを私が実務で使い続けて気づいた本質的な結論を、最後に共有したい。
Claudeは「叩き台作成パートナー」として使うのが最も効果が高い。
AIが出した原稿をそのまま使うのではなく、「AI70%+自分の言葉30%」で仕上げるのが正しい使い方だ。顧客の名前、商談で聞いた本音、自社サービスへの確信──これらはAIには生成できない。Claudeに構造と論理を作らせ、人間がリアルを乗せる。これが私の実務で確立したベストプラクティスだ。
また、プロンプトは使い捨てにしないことも重要だ。商材・業種別に磨いたプロンプトは、チームの「共有財産」になる。ベテランの思考回路をプロンプトという形で形式知化することで、組織全体の営業力が底上げされる。これはかつてキーエンスが外報制度で実現した「ナレッジの組織資産化」と同じ発想だ。
ぜひ本記事のプロンプトを起点に、自社・自分の営業スタイルに合ったプロンプト集を育てていってほしい。
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この記事を書いたひと
株式会社マイノリティ 代表取締役
柳澤 大介
新規事業のマネタイズやグロースが専門。埼玉大学で「イノベーションとマーケティング講座」の講師を務める。監修した「法人営業の教科書」はUdemyの販売実績2,800万円のベストセラー。