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ソーシャルセリング実践例 【Moonshot CEO】すがけんさん

「すがけん」さんって?

――今回は株式会社Moonshot代表取締役CEOのすがけんさんにお越しいただきました。よろしくお願いします!

 

すがけんさん:よろしくお願いします。

 

 

――すがけんさんといえば、人気ニュースアプリ「スマートニュース」のブランド広告責任者(Head of Brand Advertising)としての経歴が有名ですが、現在はどのようなお仕事をされているんでしょうか。

 

すがけんさん:経営者向けのアドバイザリー業です。簡単に言えば「経営者さんの相談に乗る」仕事ですね。そう言うと経営コンサル的な事だと思われてしまうんですけど、僕の中では違っていて。

 

――どういう点が違っているんですか?

 

すがけんさん:特徴的なのは、アウトプットの有無ですね。コンサルの方はいっぱい資料を集めて提案書を作って、場合によっては会社と伴走しながら実務に関わるケースもありますよね。

 

でも僕は一切アウトプットしないんです。何も作らないし、何も納品しない。経営者さんと話をして、第三者の視点から思ったことを言う。それだけなんです。

 

――なるほど。でも、もし本当に「話を聞いて思ったことを言う」だけなら、自社の社員さんでもよさそうです。すがけんさんじゃなきゃいけない理由があるんでしょうね。

 

すがけんさん:そうですね。「聞く」という言葉には二つの意味があって、一つは文字通り「耳を傾ける」ということ。そしてもう一つが「質問する」という意味。確かに前者なら誰でもできそうですが、後者はけっこう特殊なスキルなんですよね。

 

経営者さんと向き合う限られた時間の中で、何をどう質問するのかはとても重要なんです。売上の事ばかり聞くこともできるし、従業員満足度について聞くこともできる。どんな質問をするかで、その後の話の内容が決まっていくわけですから。

 

そういう意味では、話す主体は経営者さんでも、会話の流れを作っているのは質問者側だと言えるかもしれません。

 

――なるほど!つまりすがけんさんは、質問というものを使って舵取りをしながら、経営者さんの課題や要望に迫っていくわけですね。

 

すがけんさん:そういうことです。あるいは別の観点で言えば、僕は自分の仕事をよく「医者」だと表現するんですけど。

 

 

――医者?

 

すがけんさん:ええ。つまり経営者さんが患者さんで、何か具合が悪いな〜って僕のところに来るわけです。あるいは、もっともっと元気になりたいから来る。

 

――ふむふむ。

 

すがけんさん:僕は「問診」しながらその内容を解きほぐしていく。そしてあくまで客観的な立場から、「これは風邪だと思います」とか「骨折してますね」とか「まったく健康ですね」なんて伝えるわけです。

 

――確かにお医者さんだ(笑)。

 

すがけんさん:そうでしょう?(笑)。もっと言えば、医者の中でも「総合医」なんですよね。その人の全体を見てどこに問題があるのかを見る役目というか。その後、具体的な治療が必要となれば「専門医」に任せるという。

 

――なるほどなるほど。まさに最初の舵取りをする人なんですね。ちなみにサービスは経営者さん限定なんですか?

 

すがけんさん:そうです。経営者限定です。

 

――それはどうしてですか?経営者さん以外にも価値がありそうなサービスですけれど。

 

すがけんさん:それは割と明確な理由があって。

 

BtoBって超ざっくり言うと、マーケティングがリードを作って、セールスが商談をして受注案件化していくわけじゃないですか。

 

仮に自分がセールスの方から仕事を受けたとして、医者である僕が「受注率を上げたいならリードの質を変えなきゃいけませんね」と言っても、「いやそれはマーケ部門の範疇なんでどうにもできません」なんて言われちゃうわけです。結果、無理やりセールス部門内で解決しようとして失敗する。

 

 

――ああ……

 

すがけんさん:例えるなら、「食べすぎて太っちゃった」という人がいて、僕は「じゃあ食べる量を減らしましょうね」と言っているのに、「それは無理なので胃を半分切除します」なんて言っているようなものなんです(笑)。

 

そんな不幸な事態にはなってほしくないので、自然と対象は経営者さんになりますね。

 

――そういうことなんですね。どんな業種の方が多いんですか?

 

すがけんさん:業種的にはバラバラですね。広告代理店から人材紹介会社、最近上場されたEC系の企業さんとか。とはいえ、そもそも年間10社しか受けないって決めているので、どんどん広がっている感じではないですけれど。

 

――10社限定!それはなぜですか?

 

すがけんさん:単純に僕のキャパシティの問題が一つ。一人でやっている会社で、受けれる量には限界がありますので。

 

もう一つは、ある種の「覚悟」です。

 

――覚悟?

 

すがけんさん:僕がやってるのって、シンプルに言えば「お客さんのビジネスをよくする仕事」なんですよね。別に「経営者さんの機嫌を取る仕事」じゃない。

 

だから時には厳しい事を言わなきゃいけない。これじゃダメですよとか、全然間違ってますよとかね。でもその時に、「こんな事言って契約切られたらどうしよう」って思ったら、言えないじゃないですか。

 

さっきの医者の例えで言えば、「このままだと患者さん死んじゃうけど、病院に来てもらえなくなったら困るから健康だって言っちゃおう!」みたいな話ですよ。医者が患者に忖度し始めたら終わりなんです(笑)。

 

――確かに(笑)。

 

すがけんさん:だから自分はあくまで短期的に雇われた人間で、一切忖度せずにはっきり言う、というスタンスで行くんだと決めてます。実際、事業って褒めても上手くいかないですから。

 

――事業は褒めても上手くいかない……深いです。

 

すがけんさん:一方で、年間10社で、しかもリピートが多くなってくると、関わる会社さんの数は少なくなってしまいますよね。僕の仕事は「消費者目線」が大事になるので、できるだけ多くの会社やサービスに触れていたい。

 

そこで僕は、この10社さんからいただいたお金を、別の会社のビジネスに投資することにしました。

 

 

――投資?

 

すがけんさん:はい。年20社くらいのビジネスに投資してますね。で、当然ですけど、投資する際にはその会社の経営者さんともガッツリ話をするわけです。

 

――あっ。

 

すがけんさん:そう。つまり、アドバイザリー業で年10社、投資で年20社、計30社の経営者さんと関わることができるということなんです。

 

これ、考えてみると結構すごいことで、例えば一般的なコンサルって、数ヶ月〜数年みたいなプロジェクトが多いわけじゃないですか。だから1人の方が関われる社数は頑張っても年3〜4社です。

 

一方の僕は年30社。仮にこれを5年間続けると計150社になって、これはもうコンサルさんの一生分くらいの数になる。

 

――なるほど!つまり、ものすごい経験値が貯まる。

 

すがけんさん:仰る通りです。だから“医者”としての目利き力も自然と上がってきまして、最近は患者さんの顔色を見ただけで、どこが悪いかだいたい想像できたりする(笑)。

 

もちろん、「顔色を見る」というのは比喩ですけど、少し話しただけで、あるいは業態を聞いただけで「こういう事に困ってるんだろうな」とわかるようになっちゃいましたね。

 

ソーシャルセリングについて

――ではここからは本サイトのメインテーマである「ソーシャルセリング」についてお話を聞いていきたいと思います。各SNSをご利用かと思いますが、それぞれどんな位置づけですか?

 

すがけんさん:すごく簡単に言えば、僕の場合はFacebookが経営者さん向け、Twitterはスタートアップ向け、Instagramは個人商店やマイクロビジネス向け、という感じですかね。

 

――なるほど。想定しているターゲットが違うと。

 

すがけんさん:そうです。だから当然発信内容も違いますね。情報の粒度を変えているというか。

 

――ソーシャルセリングの観点で言うとどうなんでしょう。一番成果が出ているものは?

 

すがけんさん:僕の場合は完全にFacebookですね。スマートニュース時代も含め、Facebook経由で仕事になったケースはかなり多い。

 

詳しくは話せませんが、最終的に10億円規模の受注になった件も、もとを正せばFacebookからでしたから。

 

 

――10億円!すごすぎます。……単刀直入にお聞きしますが、どうやったらSNSでそんな仕事が取れるんでしょう。やっぱり普段から有益な情報を発信して……

 

すがけんさん:そうですね。まず投稿に関して言うと、これはFacebookに限らずですが、「知識」と「考え方」は分けたほうがいい、というのがあって。

 

――「知識」と「考え方」?

 

すがけんさん:ええ。皆さんけっこう「知識」、つまり情報そのものを発信されるんですけど、それよりも「考え方」を発信した方がいいように思いますね。

 

「こういう情報がありますよ」はあってもいい。でもそれで終わらせず、「ちなみに僕はこういう風に考えてます」「だからこんな動きを始めてます」というようなものも伝えていく。そうすると段々と「こいつ面白いな。一回話をしてみたいな」という経営者さんが出てくると。

 

――なるほど〜。

 

すがけんさん:ただ、別に発信を頑張らなくても仕事は全然取れると思っていて。

 

 

――えっ!?そうなんですか?

 

すがけんさん:例えば、営業したい会社があるとして、その経営者さんをFacebookで検索しますよね。するとだいたいアカウントは見つかるので、DMによるアプローチは可能なんですよ。

 

でも、知らない相手からいきなりDM来ても見ないじゃないですか。

 

――それはそうでしょうね。

 

すがけんさん:そこで注目するのは「共通の友達」です。その人に間に入ってもらって、紹介してもらう。

 

――あっ、なるほど!「ちょっと知り合いの話を聞いてやってくれ」的なことを言ってもらうんですね。

 

すがけんさん:いや、それじゃだめですね。

 

――えっ? そうなんですか?

 

すがけんさん:だって、それだけだと僕が何についてどんな提案をするのか全然わからないじゃないですか。ただでさえ経営者は忙しいのに、そんなのにイチイチ時間は取っていられない。

 

だから僕は、自分たちと取引すればどんなメリットがあるか、パッと見てわかる数行の文章にまとめるんです。

 

で、紹介をお願いしている方にこう伝える。「この数行だけでいいので先方に転送してくれませんか。これを見れば先方にメリットがあることは一瞬で伝わるので」と。

 

――な、なるほど。詳細資料などは送らない。

 

すがけんさん:このタイミングではいりませんね。長々しい挨拶なんかも必要ありません。むしろ逆効果です。

 

「こういうサービスをいくらで売ってますが買いますか?」「もしこの仕組みがこう変えられるとしたら導入しますか?」みたいなシンプルなものです。そこで「NO」となるなら、それ以上の詳細は必要ないわけで。

 

 

――確かに…。

 

すがけんさん:「じゃあ説明してよ」と相手が言ってくれたら、そこで初めて詳細をまとめて持っていく。

 

とはいえ、僕のプレゼンなんて30分パワポ10枚くらいのものですよ。もちろんその後、各部署ともっと詳細な打ち合わせが発生するわけですが、対経営者のプレゼンならそれくらい本質に絞った内容にするべきです。

 

――そうか。経営者さんには「判断」の部分を担ってもらう。

 

すがけんさん:それが彼らの仕事なので。だからこそ、早く判断するための環境はこちらが作る必要があるわけですよね。

 

今なんて複数のSNSやチャットツールで、毎日何十人もの人とやり取りするのが当たり前です。そんな時代、コミュニケーションにおける「理解スピード」「時短」というのは絶対に外せない。

 

紹介する方もラクなんですよ。数行のメッセージを転送するだけだし、場合によっては「紹介してくれてありがとう!」なんてお礼を言ってもらえたりするわけだから。

 

――ああ!つまり、紹介する方のコストも低く、メリットが発生することもあると。

 

すがけんさん:まさにそういうことです。要するにポイントは「紹介者がヒーローになれる状況」をいかに作るかということ。

 

それができれば、その方が別の経営者さんに勝手に営業してくれたりする。「あれ、あの会社にも転送しといたよ」ってね。そこからまた新しい取引が生まれたりして、繋がっていく感じですよね。

 

――なるほど!「Twitterでたくさんフォロワーを集めて」というようなやり方とはまた違うものですね。

 

すがけんさん:TwitterはTwitterでまた別の戦略が考えられるんでしょうけどね。ただ言えるのは、BtoBにおいては全然繋がってない人たちに「バズって」もあまり意味ないですよね、という事です。

 

そうじゃなくて、自分のビジネスと関係のある人たちとどれだけ仲良くなれるか。僕はよく「インサイダーになれ」っていう言い方をしますが、業界のキーマンたちとどれだけ近い存在になれるかを意識すべきです。その過程においては、さっきの紹介プロセスが役に立つ気がしますね。

 

著作について

――そんなすがけんさんですが、新著が発売されたそうで。

 

すがけんさん:そうなんです。2022年12月8日に『小さく分けて考える〜「悩む時間」と「無駄な頑張り」を80%減らす分解思考〜』という本が出ました。

 

 

――どういった内容なんですか?

 

すがけんさん:「理想と現実のギャップ」は誰にでもあると思いますが、それを具体的に因数分解して、小さく分けて考えていきましょう、という本です。

 

例えば会社で「売上目標が達成できない!」という問題(=理想と現実のギャップ)があったとしますよね。それを大きな一つの塊として捉えるのではなく、小さく分解していく。そうすると、なぜ売上が上がらないのか、その原因がどこにあるのかが見えてくる。

 

「アポ数が減ったから」なのか「客単価が下がったから」なのか「コロナで来客数が減ったから」なのか。そうやって分解していけば、どこをどう改善していけばいいのか考えやすいよねと。

 

 

――なるほどわかりやすい!仕事以外でも使えそうです。

 

すがけんさん:まさに仰る通りで、プライベートにも全然使える考え方です。今日の話にもあったように、今ってSNS時代で、毎日いろんな人のいろんな発信を見まくっているわけじゃないですか。

 

で、基本的に皆、フォローするのは「自分よりすごい人」なんですよ。自分よりきれいな人とか、自分よりお金持ちな人とか、「自分もこうなりたい!」と思う人の情報ばかりを見てしまう。

 

だからどうしても「自分はなんてダメなんだろう…」と思ってしまう。これ、まさに「理想と現実のギャップ」ですよね。

 

――確かに!

 

すがけんさん:そこで、「自分はなんてダメなんだ」という大きな問題のままで悩むのではなく、要素ごとに小さく分割していく。そうすることで自分の現在地がよく見えるようになり、何が足りないのか、どこから改善していくべきかもわかってきます。

 

――なるほど!確かにそうすることでラクになれそう。

 

すがけんさん:そうなんです。本当に何にでも使える、何度でも使える考え方です。経営者さんはもちろん、幅広い方に読んでいただきたい本です。

 

こちらから購入可能ですので、よかったらお願いします。

 

――はい、ということで本日はすがけんさんにお越しいただきました。非常に濃いお話をありがとうございました!

 

すがけんさん:ありがとうございました!

 

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