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ソーシャルセリング実践例 【創業手帳】大久保幸世さん

創業手帳とは?

――今回は「創業手帳」代表の大久保幸世さんにお越しいただきました。よろしくお願いします!

 

大久保さん:はい、よろしくお願いします。

 

 

――大久保さんと言えば「創業手帳Tシャツ」ですが、やはり本日もそうなんですね!

 

大久保さん:私は365日これですので。

 

――さて、ではあらためて『創業手帳』というのはどんなサービスなのか教えていただけますか?

 

大久保さん:経営者さんが創業期に学ぶべきアレコレをまとめた無料冊子です。私たちはよく「会社の母子手帳」という言い方をしますが、「お金はどう借りたらいいのか」とか、「集客ってどうやったらいいのか」とか、駆け出しの経営者さんに必要な情報がまとまっています。

 

法人登記すると自動的に送られてくる仕組みなので、会社を作ったことのある人なら「ああ、あれか」とわかってもらえるんじゃないでしょうか。

 

――なるほど。発行部数で言うとどれくらいなんでしょう。

 

大久保さん:紙の冊子は月1万5,000部発行で、累計では200万部を超えてますね。WEB版もありまして、こちらは毎月100万人以上の方に見ていただいています。

 

 

――100万人以上!それはすごいですね。素人考えで恐縮ですが、このWEB全盛の時代、紙の冊子にこだわる理由はあるのでしょうか。それだけニーズがあるなら完全にWEBに移行しちゃおう!とはならなかったんですか?

 

大久保さん:いや、ならなかったですね。紙にもWEBにもメリットとデメリットがありますので。

 

例えば紙媒体は、長い目で見れば廃れていく運命にあると思いますし、印刷や配送には結構なコストがかかります。そういう意味では確かにデメリットも多い。

 

ただし、創業したばかりの新人経営者さんが手元に置くメディアとしては、WEBよりも冊子の形でまとまっていた方がわかりやすいわけです。情報をパッケージ化して集中的に配置するなら、紙媒体のほうが優れています。

 

――なるほど〜。「起業家の支援」という本来の目的から考えれば、紙の冊子も欠かせないというわけですね。ちなみに、WEBにもデメリットが?

 

大久保さん:そうですね。WEBっていうのは無限なので。サーバーの容量さえあれば何百ページ、何千ページとどんどん増やせてしまいます。でも、創業したてで忙しい経営者さんが、そんなの全部読んでられないじゃないですか。

 

「この120ページだけでいいから読んどいて」と言われた方が対応しやすい。とりあえず大切なことはここにまとめておいたから、と。

 

――確かにそうですね。ちなみに、そもそもなぜこういう事業を始められたんですか?

 

大久保さん:そうですね。私は以前ライブドアっていうITの会社にいたんですが、そこを退職した後にSaaSのシステムを売る会社で役員をしていまして。システムを売るついでに、ECにかかわる困りごとのコンサルもしていたんですけれど。

ただ、クライアントである経営者さんと話していると、それ以前の相談がすごく多い。

 

――それ以前の相談?

 

大久保さん:ええ。「株式会社作ったんだけど株主総会ってどうやるんですか」とか、「費用が足りないんですけど誰に言えばいいですか」とか、「変なエンジェル投資家に株持ってかれちゃいそうなんですけど」とか(笑)。

 

 

――なるほど(笑)。確かにネット通販以前の問題だ。

 

大久保さん:そうなんです。開業したんだからそれくらい知っておいてよと思いつつ、仕方がないから個人的にアドバイスしてたんです。

 

ただ、その手の質問があまりに多くなってきまして。しかも皆さん、だいたい同じような事に困ってる。

 

毎回毎回同じような事を教える中で、これはもうプラットフォーム的な何かを作ったほうがいいんじゃないかと。

 

――ああ!それで「創業手帳」が生まれたんですね。こういうのが一冊あれば毎回説明しなくて済むぞと。

 

大久保さん:まあそういうことですよね。動機としては割と単純です。

 

ただ、いくら無料冊子と言えど、公のメディアとして発表するからには責任が伴うわけです。間違った情報を載せるわけにはいかない。

 

だから掲載内容は全部専門家の方にチェックしてもらって、必要があるものは全部新たに取材したりもして。

 

――なるほど。かなり力を入れて作られた。

 

大久保さん:まあそこは、ビジネス的な戦略の一環でもあって。

 

新米経営者向けの、しかも専門家の監修が入ったきちんとした情報を発信していけば、きっと多くの方に認知され、信頼されていくだろうと考えたんです。

 

その結果、「創業手帳に広告を載せたい」という企業が増えていく。そうすればビジネス的にも回っていくだろうと。

 

――実際、創業手帳にはたくさんの企業さんが広告を掲載されていますよね。効果も出そうです。

 

大久保さん:そうですね。ウチの広告は資料請求モデルが多いんですが、例えば会計ソフト系の広告なんかは、1サービスあたり月間1,000件以上の請求が来ますよ。

 

――1サービスで月間1,000件!すごいですね。

 

大久保さん:創業手帳の会員って今は10万人を超えていて、しかもその多くが経営者です。会員になるくらい創業手帳を信頼してくださっている経営者に広告を投下できるわけですから、反響率は当然すごく高くなりますよね。

 

要は「創業手帳がすすめるサービスなら間違いないだろう」と思っていただけるってことです。

 

――なるほど。広告掲載側から見れば、創業手帳の会員リストにアプローチできる事自体が魅力なわけですね。ということは創業手帳さんとしては、「起業家に役立つサービスを提供する出展企業探し」と同時に「新規会員の獲得」も重視されていると。

 

大久保さん:もちろんです。両方大事ですが、どちらかと言えば会員獲得に注力している感覚です。会員数が増えれば、スポンサーも自然と増えていくだろうと。

 

ソーシャルセリングについて

――それではここからはソーシャルセリングについてお聞きしていきたいと思います。「創業手帳」としてはどのようにSNSを活用されてきましたか?

 

大久保さん:そうですね。Facebook、Twitter、Instagram、YouTubeといろいろアカウントはありますが、それらの中で比重が大きいのはFacebookです。

 

創業手帳のFacebookページは4万5,000人以上の方にフォローいただいていますね。

 

 

――確かにTwitterアカウントのフォロワーが1.1万人で、Instagramが2,100人というのを考えると、Facebookが圧倒的ですね(すべて2022年12月現在)。何か理由はあるのでしょうか。

 

大久保さん:創業が2014年なんですが、当時は「Facebook全盛」の時代でした。会員になってもらいたい経営者の年齢層を考えても、当時始めるならFacebook一択、という雰囲気だったんです。

 

それでFacebookをメインで活用し、そのまま現在に至るという感じです。

 

――なるほど。

 

大久保さん:もっとも、SNSって流行がありますから。

 

若い世代の方って、自分より上の世代が好んで使うSNSを敬遠しがちじゃないですか。敢えてそこを避けて別のSNSを使う。さらに下の世代がまたそれを避けて別の新しいSNSを使う。だからSNSの世代交代のようなことが起こる。

 

 

――確かに!ということは、Facebook以外に注力していく可能性もあると。

 

大久保さん:もちろんあるでしょうね。とはいえ、私たちのターゲットというのは明確で、これまでもこれからも「経営者」です。そういう意味では今後もメインはFacebook、あるいはTwitterあたりになるかと思います。

 

――なるほど。発信内容としては、新しいコンテンツが掲載されたらFacebookやTwitterで都度お知らせする感じですか?

 

大久保さん:うーん、ざっくり言ってしまえばそうなんですが、創業手帳ってものすごい数の取材や記事作成をしているので、何も考えずそれらすべてを垂れ流すのは違うなと思っていて。

 

大切なことを冊子で120ページにまとめたのと同様、SNSの利用者層や時勢に合わせて情報をキュレーションしていく。そしてそれを各SNSの特性に合わせた表現方法で出していく、ということが必要なんだと思いますね。

 

――それはつまるところ、「バズりやすい形」に加工していくという?

 

大久保さん:いや、そうではありません。先ほどもお伝えしたよう我々のターゲットは経営者で、その方達に創業手帳の会員になっていただくことが目的です。

 

ですから、通りすがりの人にバズってもあまり意味がないわけです。FacebookにしろTwitterにしろ、単純に「フォロワーを増やすぞ」という感覚ではやっていないですね。

 

――なるほど〜。では逆に何を意識しますか?

 

大久保さん:バズらせるみたいな一瞬の爆発ではなく、「やっぱりこのメディアは信頼できるね」「経営者に役立つメディアだね」と思ってもらうという事でしょうか。会員化というのはそういう安心感、期待感の先にあるんだと思ってます。

 

――実際そういったSNS運用をされていて、効果を感じることはありますか?

 

大久保さん:もちろん感じますね。現状だと月間5,000人くらいの方が新規会員登録してくれてますので。

 

――月間5,000人!?そんなペースで増えているんですか。すごいですね。

 

大久保さん:本、WEB、そしてアプリもありますので、すべてがSNSキッカケというわけではないですが、かなり重要なチャネルの1つだとは思ってます。

 

さらに言えば、今後はよりSNSの運用が大事になってくるでしょうね。

 

――というと?

 

大久保さん:新聞や雑誌、あるいはニュースサイトなども含め、これまでのメディアは一方通行的な情報発信が基本でした。でも、SNSでは双方向のコミュニケーションが可能です。

 

ニュースサイトと同じ「ネット上」にはあるけれど、よりインタラクティブな、「血の通ったやりとり」ができる場になっている。言わば「人間本来のコミュニケーション」に戻ってるわけですよ。

 

――ふむふむ。

 

大久保さん:ネット上だけど顔が見えて、素性もわかって、人間性まで感じられる。誰が何をやっているのかがリアルタイムでわかり、必要があれば直接質問できたりもする。つまり「ネット上でしか知らないけど信頼できる」という事が当たり前になってきているんです。

 

――はは〜確かに。

 

大久保さん:逆に言えば、いかに自分がそういう存在になっていくかということですよね。「この人が言うなら間違いない」と思ってもらえるような。

 

だから新聞や雑誌に大々的に広告を打っても、そこに“SNS的な信頼”がなければ以前のようには売れない時代が来るはずです。

 

――うわ、おもしろい!だからこそ、SNSを通じたコミュニケーションはもはや必須になっていくと。

 

大久保さん:そうなっていくと思いますね。

 

また、SNSに限らずですが、WEBでの発信では様々なデータが取得できますよね。ユーザーの属性をセグメントしてそれぞれに対して最適な広告が出せる、というようなテクニカルな面のメリットもあります。

 

そういったデータも活用しつつ、人間性をベースにした発信や交流をしていく。今風のワードで言えば「エンゲージメント」とか「ランク」とかいう話になるのかもしれませんが、今後のPRはよりそういう方向に進んでいくと思いますね。

 

――ありがとうございます。よくわかりました。ちなみにTwitterには大久保さん個人のアカウントもありますよね。

 

大久保さん:ああ、ありますけど、PRに使おうとはまったく思ってませんね。自分の思ったことを思ったままつぶやくんで、編集の人間によく怒られちゃうんですけど。

 

 

――怒られるんですか(笑)。ちなみに個人アカウントによる成果・効果を感じる場面はありますか?

 

大久保さん:まあ、それこそ「信頼」の一つの根拠にはなりますよね。今の時代、初めて会う人はだいたいSNSで検索したりするじゃないですか。それで僕のアカウントを見つけて、「お、共通の友人がたくさんいるな」とか「フォロワーも7,000人ならちゃんとした人なんだろうな」とか思うわけで。

 

――確かに確かに。

 

大久保さん:SNS以前はそういうのを、社名とか出身大学とかで判断してたわけですよ。◯◯商事の人だから安心、◯◯大学出身だから大丈夫、みたいなね。

 

そう考えるとSNSアカウントって、今の時代の名刺や履歴書みたいなものなんですよね。

 

――なるほど、間違いないですね!

 

大久保さん:だから皆さん、特に経営者の方は絶対やった方がいいと思います。ときどき「炎上したらどうするんだ」なんて心配してやらない方もいますけど、そんな簡単に炎上なんてしませんから(笑)。

 

ということで皆さん、勇気を出してSNS始めましょう!

 

こんな感じの締めでいかがですか?(笑)

 

――最高の締めです(笑)。ということで本日は創業手帳の大久保さんにお越しいただきました。ありがとうございました!

 

大久保さん:ありがとうございました!

 

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