著者:柳澤大介(株式会社マイノリティ代表取締役)キーエンス・メルペイ・スマートニュースを経て、2021年2月にBtoB営業・マーケティングコンサルティング会社を創業。現在は大手〜中小企業の営業DX支援に携わりながら、Claude等の生成AIを日常的な業務に統合活用している。
この記事のポイント
- 営業会議の進め方を、事前準備から当日の進行、会議後のフォローまで手順に沿って解説
- 週1回30分で回す定例会議の実物アジェンダと、5分・10分・10分・5分の時間配分
- 受注率ではなくフェーズ移行率を見るべき理由と、改善するフェーズを1か所に絞る考え方
- 新規受注が前四半期比130%増になったバーティカルSaaS企業など、支援先4社の会議設計と成果
- 報告会にしないための質問のしかたと、AIを使った商談レビューを週30分で回す方法
目次
営業会議を毎週開いているのに、担当者の報告を聞くだけで終わり、受注は増えない。そんな悩みを抱える営業組織は少なくありません。
会議は高くつきます。一般労働者の賃金は月額34万600円(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査)。
月160時間で割ると時給は約2,100円です。営業10人が週1時間の会議を年50回開けば、500時間、約106万円分の人件費になります。
私(柳澤)はキーエンスグループで営業を経験し、現在はBtoB企業の営業組織づくりを支援しています。この記事では、私が支援先で実際に使っている会議の型と数字を公開します。
結論は3つです。会議は週1回30分。報告は会議の前に終わらせる。最後の5分で決めたことを書く。
営業会議は、目標に対する進捗を確認し、ズレの原因と打ち手を決める場です。情報共有そのものはゴールではありません。経営学者のP.F.ドラッカーも、会議の種類によって必要な準備と得るべき結果は変わると述べています(Harvard Business Review、2004年)。
インテル元CEOのアンドリュー・グローブは、定例で回す会議と、特定の問題を解くために開く会議を分けて考えるよう説いています(『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』)。私の支援先でも、会議は目的ごとに分けて短くしています。
| 会議 | 目的・主な議題 | 頻度・時間 |
|---|---|---|
| 定例の営業会議 | 案件の状態と月次実績を見て打ち手を決める | 週1回30分 |
| 事前レビュー | 今週の全商談の仮説を磨く | 月曜30分 |
| パイプラインレビュー | 売上の予実精度を上げる | 水曜30分 |
| 事後レビュー | 商談録画を見て仮説と実態のズレをなくす | 金曜30分 |
| 朝礼 | その日の訪問先と行動を宣言する | 毎朝 |
| キックオフ | ゴール・役割・運用ルールを合意する | 立ち上げ時に60分 |
| 1on1 | 個別商談の準備と振り返り | 商談ごと |
※すべてを開くわけではありません。目的に合わせて選びます。7-1のSaaS企業は月・水・金の3回で、合計週90分でした。
一人ずつ進捗を話すだけで30分が過ぎ、議論と決定の時間が残りません。対策は4-2で解説します。
受注率や売上だけでは、どこを直せばよいか分からず、もっと頑張ろうで終わります。対策は5章で解説します。
集計や資料作りに、営業の時間が奪われていませんか。ドラッカーは、会議は組織の不備を補うためのもので、会議に出ている間は仕事ができないと指摘しています(『経営者の条件』)。対策は4-2で解説します。
担当と期日のない決定は実行されません。議事録が発言の記録になっていると、次回も同じ議論を繰り返します。対策は4-6で解説します。
ここからは、私が2026年8月から支援している経営コンサルティング会社の定例会議を例に、手順を解説します。アジェンダは次のとおりです。
| 時間 | やること | 見るもの |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 今の状態を見る | 案件リストのステータス別件数、期日切れ |
| 5〜15分 | 月次実績を見る | 紹介・商談・受注の目標との差 |
| 15〜25分 | ルート別を見る | ルートごとの受注率 |
| 25〜30分 | 決めたことを書く | 次アクションと期日 |
まず、この会議で何を決めるのかを一文で書きます。顔合わせや報告で終わらせないためです。
議題ごとに分数を入れたアジェンダは前日までに配ります。7-4で紹介するキックオフでも、私は分単位のアジェンダを事前に配りました。
報告は会議でしません。会議の前に、各自が案件リストを更新しておくことを締切にします。
この支援先では、入力は案件リストだけにしました。KPIシートは自動計算にして入力を不要にし、会議のために資料を作らせない状態にしています。案件リストには、ステータス(紹介/商談/提案中/保留/受注/ロスト/期日切れ)、次アクション、期日の列があれば十分です。
最初の5分は、ステータス別の件数を見ます。期日切れの赤い行が残っていれば、その場で案件リストを更新し、0件にしてから先へ進みます。私は毎回、まずここを見ます。
期日切れの案件とは、次アクションの期日を過ぎたまま止まっている案件のことです。
次の10分で、当月の紹介と商談が目標に足りているかを確認します。この支援先の月次目標は、紹介7件、商談3.5件、受注1件です。足りない分は、どのルートで積むかをその場で決めます。
次の10分はルート別に見ます。この支援先では、受注率が高いルートに力を寄せ、商談が3件以上あるのに受注0のルートは打ち手を変えるルールにしました。3か月目には、ルートごとに続けるか撤退するかを判断します。
最後の5分は、案件リストの次アクションと期日を更新して終わります。議事録は別に作りません。
支援先を見てきた私の実感として、最後に決めたことを書く。これだけで、会議の性格が変わります。
個別の商談を全員の前で深掘りすると、会議は長くなります。7-1で紹介するSaaS企業では、全商談の事前準備と事後レビューを1on1で行いました。
私がいたキーエンスグループでも、実質の営業会議は、前日18時ごろの事前外報と訪問後の事後外報でした(外報の仕組みを解説した記事)。上司と1対1で、課題仮説、刺さる事例、商談ゴール、ネクストアクションを確認します。全員で長時間集まる報告会はありませんでした。
グローブも1on1をマネジャーの重要な仕事としています。商談後に予定と実際の差とその理由を振り返る方法は、米国陸軍のアフター・アクション・レビューとしても知られます。
*ルートを選ぶ場面では受注率も使いますが、商談の進め方を直すときに見るのはフェーズ移行率です。
私が会議で重視するのは、受注率ではなくフェーズ移行率です。今期は受注率が低い、という報告では、頑張れとしか言えないからです。
1回目の商談で落ちているのか、提案で落ちているのか、見積後に消えているのか。どこで落ちているかで、病気も処方箋もまったく違います。
フェーズ移行率とは、あるフェーズの案件のうち、次のフェーズに進んだ割合です。私は会議で、初回商談→提案、提案→見積、見積→受注の3つの移行率を毎週見ます。トップ営業と平均の差が大きいフェーズほど、改善の余地があります。
私の持論は、改善は広げるより絞るほうが速い、ということです。差が最大のフェーズを一つだけ選び、その月のテーマにします。全体の成果は最も弱い工程で決まるという、エリヤフ・ゴールドラットの制約理論(『ザ・ゴール』)と同じ考え方です。
私が在籍していたキーエンスグループには、感覚ではなくデータで議論し、結果指標をプロセス指標まで分解して日次で改善する文化がありました。受注ではなく、型を使った回数を追う支援先の例は7-3で紹介します。
成果の指標と、成果を生む先行指標を組み合わせる考え方は、キャプランとノートンが提唱したバランス・スコアカードでも示されています。行動量の設計はBtoB営業の行動量管理の記事で解説しています。
私が支援先に導入しているのは、週1回30分の型の会議だけで回す仕組みです。
続けるための唯一の条件は、重いプロジェクトにしないことです。私が登壇の場でもお伝えしているのが、次の一言です。週2時間かかる設計にした時点で、その仕組みは失敗が確定します。
地味ですが、私が効果を実感している工夫です。チェックリストにバージョン番号と更新日を入れると、新しく入ったメンバーが、どれが最新かで迷わなくなります。型づくりにはAIで営業スクリプトを作る方法も役立ちます。
私が設計している商談録画のレビューは、次の4工程で週30分に収まります。
人がやるのは3と4だけです。AI活用の全体像はインサイドセールスのAI効率化マニュアルをご覧ください。
レビューは全件やりません。私が深く見るのは、勝ち商談と接戦の商談だけ、週2〜3件です。学びの大きい商談に時間を集中させます。
従業員90名のバーティカルSaaS企業は、フォーキャスト(売上や需要の着地見込みの予測)のブレが大きく、自転車操業に近い状態でした。私は会議を週3回、各30分に分けました。
あわせて1on1で全商談の準備と振り返りを行い、録画はすべて文字起こしして、営業のプロがどこをどう改善するかを具体的に伝えました。結果、フォーキャストの精度は飛躍的に向上し、新規受注は前四半期比130%増(2.3倍)に。3か月トレーニングしたメンバーは、前四半期比148%の成長を遂げています。
人材サービスの支援先では、アポ→商談→受注のファネルを毎週レビューする型を立ち上げました。最初は私がファシリテーターを務め、型が固まったら社内のリーダーへ引き継ぐ設計です。
セキュリティ機器販売の会社では、朝礼で、その日に型を使って商談する訪問先を各自が宣言し、週次で3つの行動KPIを報告しています。活動のノルマは受注件数ではなく、型を使った回数です。型は使わないと上達しないからです。
農業資材メーカーの支援では、キックオフを顔合わせではなく決める場にしました。分単位のアジェンダを事前に配り、60分で次の5点を合意して、翌日から動ける状態にします。
私の答えは週1回30分です。目的別に分ける場合も、7-1のSaaS企業のように合計週90分以内に収めます。仕事は与えられた時間いっぱいまで膨らむというパーキンソンの法則(1955年)のとおり、会議も長く枠を取るほど長引きます。
時間帯も決めておきましょう。キーエンスグループでは9〜18時の社内会議が禁止で、月曜朝30分の全社会議を除き、営業の会議は18時以降でした。日中はすべて顧客のために使うという考え方です。
参加者は、その日に決める内容に関わる人に絞ります。進行役、タイムキーパー、記録係を決め、記録係は発言録ではなく案件リストの更新を担います。
会議の質は、マネージャーの質問で決まります。私が支援先で守っている原則は次のとおりです。
| 避けたい聞き方 | 置き換える聞き方 |
|---|---|
| 課題は何ですか? | 直近の1件を具体的に教えてください |
| できていますか? | 直近1か月で何件ですか? |
即答できなかった質問こそ収穫です。そこが、まだ見えていない箇所だからです。
未達を個人攻撃にすると、失注の兆しや期日切れが隠れます。必要なのは、悪い報告をしても責められないと全員が感じられる心理的安全性です。悪い情報を早く出した人を評価すれば、手を打つのも早くなります。
マネージャーが最初から会議をうまく回せないのは自然なことです。現実的なのは、最初は外部の人間がファシリテーターを務め、型が見えてから社内に移管する方法です。
私も支援先では、週次レビューを自分で回してからリーダーに引き継いでいます。マネージャーの役割は営業マネージャーの本質的な役割で解説しています。
営業会議の進め方で大切なのは、会議を報告の場から決める場に変えることです。
まずは次回の会議で、30分のアジェンダを試してみてください。
Q. 営業会議は週に何回、何分が適切ですか?
A. 週1回30分が基本です。弊社の支援先では、実行・計測・発見・更新の4つを30分で回す定例だけで改善を続けています。目的別に分ける場合も、30分×週3回の合計90分以内に収めます。
Q. 営業会議では、どの数字を確認すればよいですか?
A. 受注率ではなく、商談フェーズごとの移行率です。初回商談→提案、提案→見積、見積→受注のどこで落ちているかで打ち手が変わるためです。期日切れの案件が0件かも、毎回最初に確認します。
Q. 報告ばかりで議論にならない営業会議は、どう変えればよいですか?
A. 報告は会議の前に終わらせ、会議では決めることだけを扱います。案件リストを更新すればKPIが自動集計される状態にし、会議用の資料作りをなくします。最後の5分で、決めたことを次アクションと期日として書いて終えます。
Q. マネージャーが営業会議をうまく進行できないときは、どうすればよいですか?
A. 最初は外部の専門家が進行役を担い、型が固まってから社内リーダーに引き継ぐのが現実的です。質問は抽象的に聞かず、直近の1件を具体的に、直近1か月で何件かと数で聞くと、議論が具体的になります。
Q. 営業会議のアジェンダには、何を入れればよいですか?
A. 週1回30分の定例なら、次の4つで十分です。期日切れ案件の確認(5分)、月次の目標と実績の差(10分)、ルート別の受注状況(10分)、決めたことの記録(5分)。弊社の支援先で実際に使っている配分です。
Q. 営業会議と1on1は、どう使い分ければよいですか?
A. 営業会議はチーム全体の数字と打ち手を決める場、1on1は個別商談の準備と振り返りの場です。個別商談を全員の前で深掘りすると会議が長くなるため、商談ごとの仮説や次の一手は1on1で確認します。
Q. 営業会議の議事録は、どのように残せばよいですか?
A. 発言の記録ではなく、決定事項・担当者・期日の3点を残します。案件リストの次アクション欄と期日欄に直接書き込めば、次回の冒頭で実行できたかをそのまま確認できます。
Q. オンラインで営業会議を行うときのポイントは何ですか?
A. 全員が同じ画面(案件リストやダッシュボード)を見ながら進め、議題ごとに時間を区切ることです。録画と文字起こしを残せば、欠席者への共有やAIでの要約に使えます。顧客情報を含む場合は、AIへの入力ルールを決めておきましょう。
参考文献
記事を書いたひと
株式会社マイノリティ 代表取締役
柳澤 大介
キーエンス初のインターネット事業「イプロス」では、4.3万社が参画する製造業向けプラットフォームの成長を牽引。メルペイで100名規模の営業組織を構築し、国内182万ヶ所の加盟店を開拓。スマートニュースで営業企画責任者を経て、2021年に株式会社マイノリティを創業。B2Bビジネスのマネタイズとグロースが専門。埼玉大学で「イノベーションとマーケティング講座」の講師。
■ 経歴
株式会社マイノリティ 代表取締役(2021/2〜現在)
https://minority.works/
株式会社ブランドファーマーズ・インク 代表取締役(2025/11〜現在)
https://brand-farmers.jp/
社長ラジオ株式会社 代表取締役(2026/4〜現在)
https://shachoradio.com/
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