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営業マネージャーに求められる本質的な役割とは──チームを崩壊させた私の失敗から学んだこと
営業マネージャーに求められる本質的な役割とは──チームを崩壊させた私の失敗から学んだこと

営業マネージャーとして昇進した瞬間、私たちは大きな期待とプレッシャーを背負います。しかし「理想の営業マネージャー」とは、一体どんな人物なのでしょうか。

私自身、マネージャーとして多くの失敗を経験してきました。特に印象深いのは、自分が「マネジメントに慣れた」と勘違いし、チームを崩壊寸前まで追い込んでしまった経験です。この苦い経験から得た学びを、同じ立場で奮闘する皆さんと共有したいと思います。
 

目次

  • 1.営業マネージャーの3つの本質的な役割
    • 1-1. プレイングマネージャーの罠を理解する
      • 1-1-1.営業マネージャーの時間配分:理想と現実の比較
    • 1-2. 「管理」ではなく「支援」の視点を持つ
      • 1-2-1.マネジメントスタイルの比較:管理型 vs 支援型
    • 1-3. 戦略的思考と実行支援のバランス
  • 2.チームを崩壊させた「慣れ」という落とし穴
    • 2-1.「慣れ」が生んだ3つの問題行動
      • 問題1:メンバーの話を聞かなくなった
      • 問題2:数字だけを見るようになった
      • 問題3:一律のマネジメントスタイルを適用した
  • 3.理想の営業マネージャーが実践する5つの行動原則
    • 原則1:メンバーの成功が自分の成功と心から信じる
    • 原則2:傾聴と質問でメンバーの思考を引き出す
    • 原則3:個別最適化されたマネジメントを設計する
    • 原則4:失敗を許容し、学びに変える文化を作る
    • 原則5:戦略と実行の両輪を回す
  • 4.営業マネージャーの成熟度を測る4つの指標
    • 4-1.営業マネージャーの成熟度を測る4つの指標
      • 指標1:チーム全体の売上成長率
      • 指標2:メンバーの目標達成率の分散
      • 指標3:メンバーの自発的な提案数
      • 指標4:メンバーの継続率
  • 5.今日から始められる3つの実践ステップ
    • 5-1.ステップ1:メンバーとの1on1の質を見直す
    • 5-2.ステップ2:チームの心理的安全性を測定する
      • 5-2-1.チームの心理的安全性チェックリスト 
    • 5-3.ステップ3:自分のマネジメントスタイルを言語化する
  • まとめ:営業マネージャーは終わりなき学びの旅

1.営業マネージャーの3つの本質的な役割

営業マネージャーの役割を理解する上で、まず押さえておくべき3つの本質があります。

1-1. プレイングマネージャーの罠を理解する

多くの営業組織では、営業マネージャーがプレイングマネージャーとして機能することが求められます。自分自身も数字を追いながら、チームメンバーの管理も行う──この二重の役割が、実は最初の落とし穴です。

私が初めてマネージャーになったとき、以下のような状況に陥りました。

  • 自分の営業活動に60%以上の時間を費やす
  • メンバーとの1on1を「時間がない」という理由で後回しにする
  • チーム全体の数字は見ているが、個々のメンバーの課題を深く理解できていない

結果として、チーム全体の売上は私個人の成績に依存する構造になってしまい、組織としての成長が止まってしまったのです。
 

1-1-1.営業マネージャーの時間配分:理想と現実の比較

営業マネージャーの時間配分:理想と現実の比較

1-2. 「管理」ではなく「支援」の視点を持つ

マネージャーという言葉から、多くの人は「管理する人」をイメージします。しかし本質的には「メンバーの成功を支援する人」であるべきです。

私が犯した最大の過ちは、メンバーを「管理対象」として見てしまったことでした。具体的には次のような行動に現れていました。

  • 日報を細かくチェックし、活動量だけを評価する
  • 商談の進め方に対して、自分のやり方を押し付ける
  • メンバーの提案を「経験不足」という理由で却下する

この結果、優秀だったメンバーから次々と退職の意向を告げられることになりました。彼らが口を揃えて言ったのは「自分で考える余地がない」「成長している実感がない」という言葉でした。
 

1-2-1.マネジメントスタイルの比較:管理型 vs 支援型

マネジメントスタイルの比較:管理型 vs 支援型

1-3. 戦略的思考と実行支援のバランス

営業マネージャーには、チーム全体の戦略を立案する「戦略的思考」と、個々のメンバーの実行を支援する「コーチング」の両方が求められます。

しかし多くのマネージャーは、どちらか一方に偏ってしまいます。私の場合は完全に「実行支援」に偏っており、戦略的な視点が欠けていました。

2.チームを崩壊させた「慣れ」という落とし穴

マネージャーとして2年目に入った頃、私は大きな勘違いをしていました。「マネジメントに慣れてきた」という思い込みです。

2-1.「慣れ」が生んだ3つの問題行動

問題1:メンバーの話を聞かなくなった

経験を積むにつれて、メンバーの相談内容を聞いた瞬間に「答え」が見えるようになりました。すると無意識のうちに、メンバーの話を最後まで聞かず、自分の解決策を押し付けるようになっていたのです。

ある日、最も信頼していたメンバーから「最近、柳澤さんは私の話を聞いてくれませんね」と言われてハッとしました。
 

問題2:数字だけを見るようになった

マネジメントに「慣れる」と、個々のメンバーの努力や成長過程よりも、結果としての数字だけを見るようになります。

私は月次のレビューで、目標未達のメンバーに対して「なぜできなかったのか」ばかりを問い詰めていました。そのメンバーが先月比で大きく成長していたこと、新しいアプローチに挑戦していたことなど、プロセスの価値を完全に無視していたのです。
 

問題3:一律のマネジメントスタイルを適用した

「このやり方で結果を出してきた」という成功体験は、マネージャーを傲慢にします。私は全てのメンバーに対して、同じマネジメントスタイルを適用するようになっていました。

しかし当然ながら、メンバーそれぞれに最適なマネジメント方法は異なります。自律的に動けるベテランには細かい指示は不要ですし、新人には丁寧なサポートが必要です。この個別対応を怠った結果、チームの雰囲気は急速に悪化していきました。

3.理想の営業マネージャーが実践する5つの行動原則

チーム崩壊の危機を経て、私は営業マネージャーとしての姿勢を根本から見直しました。その過程で見出した5つの行動原則を紹介します。

原則1:メンバーの成功が自分の成功と心から信じる

自分が数字を作るのではなく、メンバー一人ひとりが成果を出せる環境を作ることこそが、マネージャーの仕事です。

私はこの原則を実践するため、次のような変化を自分に課しました。

  • 自分の営業活動の比重を30%以下に抑える
  • メンバーの成功事例を週次ミーティングで必ず共有する
  • 自分の成果よりも、メンバーの成長を評価指標の中心に置く

原則2:傾聴と質問でメンバーの思考を引き出す

答えを与えるのではなく、メンバー自身が答えを見つけられるよう支援する──これがコーチング型マネジメントの本質です。

具体的には、1on1の場面で以下のような質問を心がけるようになりました。

  • 「今、一番困っていることは何ですか?」
  • 「その課題を解決するために、どんな選択肢がありそうですか?」
  • 「もし予算や時間の制約がなかったら、何をしたいですか?」

最初のうちは、メンバーも戸惑っていました。しかし続けるうちに、彼ら自身が主体的に考え、行動するようになったのです。

原則3:個別最適化されたマネジメントを設計する

メンバーそれぞれの特性、キャリア志向、現在の課題を深く理解し、一人ひとりに合わせたマネジメントを行います。

私は各メンバーについて、以下の項目を整理するようにしました。

  • 強みと弱み
  • キャリア目標(1年後、3年後、5年後)
  • 現在直面している課題
  • 最適なコミュニケーション頻度とスタイル
  • モチベーションの源泉

この情報を基に、Aさんには週1回の短い1on1を、Bさんには月1回の深い対話の時間を設けるなど、個別にカスタマイズしました。

原則4:失敗を許容し、学びに変える文化を作る

営業という仕事は、成功よりも失敗の方が圧倒的に多いものです。その失敗をどう扱うかが、チームの成長を左右します。

私はチーム内で「失敗共有会」を月1回開催するようにしました。失敗した案件について、責めるのではなく、そこから何を学べるかをみんなで議論する場です。

最初は誰も発表したがりませんでしたが、私自身の失敗談を赤裸々に話すことで、徐々に心理的安全性が高まっていきました。

原則5:戦略と実行の両輪を回す

チーム全体の方向性を示しながら、個々のメンバーの実行を支援する──この両立が営業マネージャーには求められます。

私は以下のような時間配分を意識するようになりました。
 

  • 戦略立案:30%
    市場分析、競合研究、目標設定、KPI設計など
     
  • メンバー支援:50%
    1on1、同行営業、商談後のフィードバックなど
     
  • 自身の営業活動:20%
    重要顧客対応、新規開拓のモデルケース作りなど

この配分により、チーム全体の方向性を見失わず、かつメンバー一人ひとりの成長も支援できるようになりました。

4.営業マネージャーの成熟度を測る4つの指標

自分がマネージャーとして成長できているかを測る指標を持つことは重要です。私が意識している4つの指標を紹介します。

4-1.営業マネージャーの成熟度を測る4つの指標

営業マネージャーの成熟度を測る4つの指標


指標1:チーム全体の売上成長率

個人の売上ではなく、チーム全体の売上が四半期ごとに成長しているかを見ます。理想的には、前年同期比で120%以上の成長を目指します。
 

指標2:メンバーの目標達成率の分散

全員が平均的に成果を出せているか、それとも特定のメンバーに依存しているかを見ます。標準偏差が小さいほど、チーム全体が機能している証拠です。
 

指標3:メンバーの自発的な提案数

月次ミーティングなどで、メンバーから上がってくる提案の数を追跡します。提案が増えているということは、メンバーが主体的に考え、行動している証拠です。
 

指標4:メンバーの継続率

優秀なメンバーが定着しているかは、マネジメントの質を測る最も重要な指標です。年間の離職率が10%以下であれば、良好なマネジメントができていると言えるでしょう。

5.今日から始められる3つの実践ステップ

理想の営業マネージャーに近づくために、今日から始められる具体的なアクションを3つ提案します。

5-1.ステップ1:メンバーとの1on1の質を見直す

まずは週1回30分、各メンバーとの1on1を確実に実施してください。そしてその時間の80%以上を「聴くこと」に使います。

1on1で意識すべきポイントは次の通りです。

  • 業務の進捗確認は最初の5分以内に終わらせる
  • 「最近、どう?」といった開かれた質問から始める
  • メンバーが話している間は、スマホやPCを見ない
  • 答えを与えたくなる衝動を抑え、質問で思考を引き出す

5-2.ステップ2:チームの心理的安全性を測定する

Googleが提唱する「心理的安全性」は、高パフォーマンスチームの必須条件です。以下の質問をメンバーに匿名で答えてもらい、現状を把握しましょう。
 

5-2-1.チームの心理的安全性チェックリスト
 

チェック項目評価の目安
このチームでは、失敗しても非難されないと感じる5段階評価で4以上が理想
自分の意見を率直に言える雰囲気がある5段階評価で4以上が理想
チームメンバーは互いの強みを認め合っている5段階評価で4以上が理想
上司に相談しやすい雰囲気がある5段階評価で4以上が理想
新しいアイデアや挑戦が歓迎される5段階評価で4以上が理想
困ったときに助けを求めやすい5段階評価で4以上が理想

※評価が3以下の項目があれば、その領域に課題があります。チーム全体の平均が4以上になることを目指しましょう。

5段階評価で平均4以上が理想的です。3以下の項目があれば、そこに課題があります。

5-3.ステップ3:自分のマネジメントスタイルを言語化する

あなた自身のマネジメント哲学を、紙に書き出してみてください。以下のような問いに答える形で構いません。
 

  • あなたが大切にしている価値観は何ですか?
  • メンバーにどんな成長をして欲しいですか?
  • どんなチームを作りたいですか?
  • そのために、あなたは何をしますか?

これを言語化することで、ブレない軸を持つことができます。

まとめ:営業マネージャーは終わりなき学びの旅

営業マネージャーとしての仕事に「完成形」はありません。市場環境も、メンバーの状況も、常に変化し続けるからです。

私自身、今でも毎日のように「これで良かったのか」と自問自答しています。しかしそれこそが、マネージャーとしての成長の証なのだと思います。

大切なのは、「慣れた」と思った瞬間に立ち止まり、自分のマネジメントを見直す謙虚さです。メンバーの成功が自分の成功であり、チームの成功が自分の成功である──この原点を忘れなければ、必ず理想の営業マネージャーに近づいていけるはずです。

皆さんのマネジメントの旅が、実り多いものになることを願っています。
 

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この記事を書いたひと

 
 
株式会社マイノリティ 代表取締役

柳澤 大介

新規事業のマネタイズやグロースが専門。埼玉大学で「イノベーションとマーケティング講座」の講師を務める。監修した「法人営業の教科書」はUdemyの販売実績2,800万円のベストセラー。

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