BtoB企業にとって、Webサイトは見込み顧客との最初の接点であり、24時間働き続ける営業担当者として、リード獲得の中核を担う重要な資産です。しかし、初めてのWebサイト制作では「どこから始めればいいのか」「何を載せるべきなのか」と悩まれる方も多いのではないでしょうか?
本記事では、BtoB企業が初めてWebサイトを制作する際に押さえておくべき戦略設計から、制作プロセス、コンテンツ戦略、SEO対策、そして成功に導くパートナー選定まで、実践的なノウハウを網羅的に解説します。これからWebサイト制作に取り組まれる方に、ぜひご一読いただきたい内容です。
目次
BtoB市場では、購買担当者の67%以上が営業担当者と接触する前にオンラインで情報収集を行うと言われています。つまり、Webサイトこそが最初の営業担当者なのです。Webサイトが持つべき4つの重要な役割を見ていきましょう。
BtoBビジネスでは検討期間が長く、複数の意思決定者が関与します。Webサイト上で適切な情報を提供し、問い合わせフォームや資料請求へスムーズに誘導することで、質の高いリードを継続的に獲得できます。
購買担当者は製品やサービスの特徴、導入メリットを深く理解した上で意思決定を行います。「自社の課題をどう解決できるか」「競合と比べて何が優れているか」を明確に示すことで、検討を後押しします。
すぐには問い合わせしない潜在顧客でも、有益な情報を継続発信することで徐々に興味を高められます。業界のトレンド記事や製品の活用事例を定期更新することで、「今は導入しないが将来的に検討したい」層との関係を深められます。
BtoBでは競合との差別化が難しく、取引相手として「信頼できるか」が重要な判断基準になります。サイト全体のデザイン品質や発信コンテンツの充実度によって、「この会社なら安心だ」という印象を与えられれば、ビジネス成功につながります。
成果を生むWebサイトは、計画的な戦略設計から始まります。やみくもにページを作り始めるのではなく、以下の5つのステップで進めることが重要です。
まず「誰に向けたサイトか」「サイトの最終目的は何か」を明確にします。BtoBでは購入までに多くの人が関与するため、業種、企業規模、職種など具体的なターゲット像を定めます。また、サイトのゴールとKPIも設定しましょう。リード獲得が目的なら「問い合わせ件数○件/月」や「資料DL数」を目標値にするといった具合です。現状の課題分析や競合サイト調査を行い、「自社ならではの強み」を打ち出す準備もこの段階で行います。
戦略に基づき、各ページのレイアウトを設計します。ユーザーが求める情報にすぐたどり着ける導線を考えます。例えば、トップページなら「キャッチコピー+CTA(行動喚起ボタン)」「課題提起〜解決策の概要」「導入事例の抜粋」「問い合わせボタン」という構成が典型的です。この段階でサイト全体のナビゲーション構造も検討し、重要ページへのリンクを目立つ位置に配置します。
ワイヤーフレームが固まったら、各ページの具体的なコンテンツ(文章・画像)を作成しデザインに落とし込みます。ポイントは「企業が伝えたいこと」ではなく「顧客が知りたいこと」をベースにコンテンツを作ることです。例えば、製品紹介ページではスペックの羅列ではなく「どんな課題をどう解決できるか」を主眼に置きます。デザイン面では、自社のブランドイメージに合ったトーン&マナーを定めつつ、テキスト可読性やCTAボタンの視認性にも配慮しましょう。
コンテンツとデザインが揃ったら、Webページとしてコーディング(またはCMSに組み込み)して実際にサイトを構築します。実装段階ではユーザビリティ(使いやすさ)とパフォーマンス(表示速度等)を重視しましょう。特にBtoBサイトでは「欲しい情報にすぐアクセスできること」が重要で、ページ読み込みが遅いとユーザーが離脱してしまいます。画像の適切な圧縮やキャッシュの活用、安定した高速サーバーの選択などでページ速度を最適化することは必須です。また、レスポンシブ対応(スマホ・タブレットでも崩れない表示)も欠かせません。
「サイトは公開して終わり」ではなく、公開後こそが勝負です。サイト公開後は定期的にアクセス解析やユーザー行動データをチェックし、継続的に改善を加えていきます。具体的には、定期的なコンテンツ更新(ブログ記事追加、事例追加など)を行いSEO評価とユーザー来訪を維持・向上させることが重要です。また、Google Analytics等で各ページの訪問数、直帰率、コンバージョン率を測定し、課題のあるページの改善策を検討します。必要に応じてヒートマップ解析でユーザーがどの箇所で離脱しているかを確認し、CTAボタンの配置換えやフォーム項目削減といった施策も講じます。
効果的なWebサイトにするには、「どんなコンテンツを載せるか」の戦略が欠かせません。BtoBサイトに最低限必要なコンテンツとその戦略的な活用法を解説します。

BtoBサイトの訪問者が求める情報は概ね決まっています。以下のページは最低限用意しましょう。
お手本となるWebサイトを以下にご紹介します。
・株式会社SmartHR
・株式会社カミナシ
・株式会社キーエンス
・ソーシャルセリング.com
SEO(検索エンジン最適化)は、検索エンジン経由で自社サイトへの流入を増やすための施策です。BtoB企業においてもSEOは重要なリード獲得手段となります。
BtoBサイトのSEOは、BtoC向けと比べて以下のような特徴と戦略上の違いがあります。
サイト訪問者をただ増やすだけでは不十分で、最終的に問い合わせや資料請求などのコンバージョン(成果)につなげることが肝心です。そのために重要なのがCTA設計とコンバージョン導線の最適化です。CTAとは「Call To Action」の略で、ユーザーに次の具体的行動を促すボタンやリンクのことを指します。
CTAの配置・デザインが決まったら、サイト全体で見てユーザーをスムーズにコンバージョンまで導く導線になっているか確認します。コンバージョン導線とは、ユーザーが入り口ページから問い合わせ等に至るまでに辿る道筋のことです。
BtoBのWebサイトを構築・運用するにあたり、どのCMS(コンテンツ管理システム)を使うか、そしてサイト制作を誰に依頼するかも重要な検討事項です。
CMSとは、Webサイトを構成するページやコンテンツを管理・更新できるソフトウェア/サービスのことです。プログラミング知識がなくても直感的にサイト運用できるため、多くの企業サイトで導入されています。代表的なCMSの例と特徴を比較表にまとめました。

CMS選定時のポイントは、自社の運用体制と要求機能とのマッチングです。たとえば「自社で頻繁に更新したい」「ノンエンジニアでも扱いたい」なら操作が簡単なSaaS型CMSが向いていますし、「サイト規模が大きくセキュリティを最重視」「独自開発部分が多い」ならエンジニア向けCMSやフレームワーク採用も検討されます。最終的には「更新のしやすさ」「実現したいことが可能か」「費用対効果」を総合的に判断して選定してください。
初めてWebサイトを制作する場合、外部のWeb制作会社に依頼するケースも多いでしょう。その際には以下の点に留意してパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。
実行モデル比較表

パートナー選定は、単純な価格比較に陥りがちですが、それは短期的な視点です。むしろ、自社の目的、予算、内部リソース、そしてWebサイトに期待する戦略的な役割を総合的に考慮し、リスクとリターンのバランスで判断すべきです。
BtoB企業が初めてWebサイトを制作・リニューアルする際に陥りがちな失敗パターンと、その対策をチェックしておきましょう。事前に失敗例を知って回避策を講じておけば、投資した時間と費用を無駄にせず効果の出るサイトづくりができます。
以上の失敗例に共通するのは、「作ること」自体が目的化している点です。Webサイト制作は手段であって目的ではありません。常に「この施策は自社のビジネスゴール達成に繋がるか?」と自問しながら進めることが重要です。また、外部パートナーに任せる場合も丸投げにせず、自社内に知見を貯めていく意識を持ちましょう。本ガイドで挙げたポイントやチェックリストを活用しながら計画的に進めれば、初めてのWebサイト制作でも大きな失敗は避けられるはずです。
BtoB企業にとって、Webサイトは見込み顧客との重要な接点であり、24時間働き続ける営業担当者です。本記事では、初めてのWebサイト制作で押さえるべき戦略設計から、制作プロセス、コンテンツ戦略、SEO対策、CTA設計、そしてパートナー選定まで、実践的なノウハウを網羅的に解説しました。
重要なポイントを振り返りましょう。
初めてのWebサイト制作は、多くの企業にとって未知の領域であり、多大な投資を伴う重要な意思決定です。しかし、適切な戦略と計画に基づいて進めれば、Webサイトは企業の成長を牽引する強力なエンジンとなります。本記事が、貴社のデジタルマーケティング戦略の確かな一歩となり、成果を生むWebサイト構築の羅針盤となることを願っています。
筆者紹介:中元鈴香
BtoB領域に特化したライター。5年以上にわたり、SaaS、IT、人材、コンサル業界のコンテンツ設計とライティングに従事。上場企業のオウンドメディア立ち上げや、中小企業のSEO内製化支援も多数経験。