ブログ
2025年春、Googleによる検索アルゴリズムの大規模な更新が実施され、多くのBtoB企業のWEBサイトに影響を与えました。検索順位が急落した企業もあれば、一方で検索パフォーマンスが大きく改善した企業もあります。この記事では、2025年3月に発表されたコアアップデートと、4月に起きた検索結果の変動が、BtoB領域におけるSEO・WEBマーケティングにどのような影響を与えたのかを解説します。
後半では、今後のBtoB SEO対策として具体的に取り組むべき戦略も紹介しますので、ぜひ自社のWEB施策の見直しに活用してください。
BtoBサイトに影響を与えた2025年春のGoogleアップデートとは？
Googleは2025年3月13日から、年初最大級となる「March 2025 Core Update」を段階的に展開しました。コアアップデートとは、Google検索アルゴリズムの中核部分を見直すもので、検索結果の順位に大きな影響を及ぼします。今回のアップデートは、従来以上にコンテンツの品質評価、特に「信頼性」や「独自性」に重きを置いている点が特徴です。
さらに、3月のアップデート完了後も、4月にかけてランキングの不安定な動きが続きました。SEO業界ではこれを“余震（Aftershock）”と呼び、コアアップデートの調整作業またはアルゴリズムの微修正が行われている可能性が高いと指摘されています。
また、同時期にGoogle検索に「AI Overviews（AI要約）」が本格導入され、一部の検索結果にAIによる自動要約が表示されるようになりました。これもユーザーの検索行動やCTRに変化をもたらしており、BtoBの情報提供型コンテンツにも大きな影響を及ぼしています。
BtoB SEOでよく見られた3つの影響パターン
1. ノウハウ記事の順位下落と検索流入減少
「○○とは」「○○のやり方」「○つのポイント」など、テンプレート的に作られたノウハウ記事の多くが検索順位を落としました。これは、特にSaaS・IT・コンサルティング系のBtoB企業が展開していたオウンドメディア型サイトで多く見られた傾向です。
その理由としては、以下のような要素が考えられます。
- 類似した記事がインターネット上に溢れており、独自性が低い
- 実体験や一次情報が欠けており、E-E-A-T（経験・専門性・権威性・信頼性）の観点で評価されにくい
- AIでも生成可能な構成・文章になっており、価値を感じにくい
結果として、上位表示されていたはずの記事が10位圏外に飛ばされ、月間アクセス数が半減するなどのケースが確認されています。
2. サービスページの評価が二極化
BtoBのサービス紹介ページやホワイトペーパーLPなども、検索パフォーマンスに差が出ました。具体的には、以下のようなページが評価を伸ばしました。
- 顧客の課題とニーズに即した情報設計になっている
- 実際の導入事例や数字データを交えて説明している
- よくある質問（FAQ）や比較表があり、検討段階のユーザーに有益
一方、評価が落ちたのは以下のようなページです。
- キーワードだけを意識して中身がスカスカなLP
- テンプレート化された構成で、どのサービスでも通用しそうな一般論のみ
- 内部リンクが乏しく、関連情報への導線が不十分
検索意図への一致度が低く、「訪問しても参考にならない」とGoogleに判断されている可能性が高いです。
3. AI要約によるCTR低下
検索結果の1位を維持していたにも関わらず、クリック数が急に落ちたケースも多数報告されています。その背景には、「AI要約ボックス」の存在があります。
特に影響を受けたのは、
- 「意味」「定義」「メリット・デメリット」など、簡潔に答えられる検索クエリ
- 情報のまとまりが良く、Google側で要約しやすい構成のページ
CTR（クリック率）はSEOで軽視されがちですが、近年は「クリックされるコンテンツ設計」も不可欠になっています。上位表示されても流入が増えない場合は、タイトルやメタディスクリプション、ファーストビューでの引きつけ方を見直す必要があります。
GoogleがBtoB SEOに求める品質基準とは？
Googleは「ユーザー第一主義」を掲げており、今回のアップデートはその姿勢をより明確に反映したものです。では、具体的にBtoBのSEO文脈においては、どのような要素が評価されているのでしょうか？
1. 経験と一次情報に基づく独自コンテンツ
Googleは、単なる情報の寄せ集めではなく、「自分たちの現場経験」や「実績データ」に基づいたコンテンツを評価します。
例えば、
- 自社サービスを導入した企業のリアルな数値変化
- 失敗した施策とそこから得られた学び
- 社内で実際に使用しているツールと活用の裏話
こうした情報はAIでは生成できず、読者にとっても“読む価値のあるコンテンツ”として支持されます。
2. E-E-A-T（経験・専門性・権威性・信頼性）の明示
記事の著者が誰なのか、どんな知見を持っているのか、出典や根拠が明示されているか。こうした要素はBtoBコンテンツでも重要視されています。
可能であれば：
- 著者情報と経歴（LinkedInへのリンク等）を掲載する
- 企業ブログであっても、執筆者の立場や視点を明確にする
- 第三者からの評価（プレス掲載、登壇実績など）を記載する
3. ユーザー体験と情報構造の最適化
UX（ユーザーエクスペリエンス）はSEOにも直結します。たとえば：
- ページが読み込みに3秒以上かかると離脱率が上がる
- モバイルで文字が読みづらいと直帰率が増える
- 1記事で完結しないと、次のアクションにつながりにくい
Googleはこれらの要素をアルゴリズムに組み込んでおり、Core Web Vitalsや構造化データの最適化も無視できません。
これからのSEOでやるべきこと【具体策5選】
1. コンテンツの棚卸しとリライト
- 古くなった記事、読まれていない記事は削除または統合
- 内容が重複している記事を1本に集約し、情報の厚みを持たせる
- 定期的に最新情報へアップデートし、鮮度を維持する
2. 検索意図の再分析とコンテンツマップの再構築
- キーワードに対して「誰が、なぜ検索するのか？」を分析
- クエリの意図を4分類（情報収集／比較検討／購入意欲／既存顧客）で整理
- それぞれに対応した記事やLPを設計し、内部リンクでつなぐ
3. トピッククラスターを意識した内部設計
- 各テーマ（例：SaaS導入、営業DX、採用広報など）で特集ページを作成
- その配下に詳細な記事群を構築し、ハブ＆スポーク型でリンク設計する
4. E-E-A-Tの強化と著者ブランドの育成
- 業界登壇、プレス掲載、受賞歴などがあればサイトに掲載
- セミナー動画やインタビュー動画をコンテンツに埋め込み、信頼度アップ
5. KPIの多軸管理とSEOレポートの見直し
- 単なるPV数で評価しない。CV率、滞在時間、スクロール率、商談化率などで評価
- 記事ごとの「役割」を明確にし、ファネルごとの指標で運用
まとめ：BtoBのSEOは“情報提供”から“信頼構築”の時代へ
2025年のアルゴリズム変動を通じて、Googleは単なる情報提供ではなく、読者と信頼関係を築くようなコンテンツを重視するようになりました。
BtoB企業においては、製品説明や事例紹介だけでなく、「なぜこの情報を届けるのか」「どんな現場の声があるのか」といった“文脈と背景”が重要です。
今後のSEOは、「検索上位を取る」ための戦術ではなく、「価値ある情報で選ばれる」ための設計へと進化しています。
御社のWEBサイトも、今一度ユーザー目線で見直し、「誰のための、どんな価値を届けるコンテンツなのか」を問い直すことが求められています。
筆者紹介： 中元鈴香
BtoB領域に特化したSEOライター。5年以上にわたり、SaaS、IT、人材、コンサル業界のコンテンツ設計とライティングに従事。上場企業のオウンドメディア立ち上げや、中小企業のSEO内製化支援も多数経験。
