プロのコンシェルジュがお客さまに適切なリフォーム会社を紹介するWebサービス『リフォームガイド』が利用者数50万名を突破するなど好調な株式会社グローバが、2021年初頭からサービス開始した完全無料の施工管理『クラフタ』。
紙のやり取りやFAX、電話を中心とした中小建設事業者の生産性を高めるこのプロダクトがどのように生み出されたのかについて、同社、小河泰史社長にお話をおうかがいしました。
創業後、約5年間の間に2つのプロダクトを立ち上げた小河社長が語る、もの作りの難しさ、わかっていてもはまってしまう落とし穴とは?
–グローバはすでに『リフォームガイド』を軌道に乗せていますが、そんな中、第2の事業として『クラフタ』を昨年から開始していますね。
小河社長:2014年に起業した際に考えていたのが、中小建設事業者のIT化を支援し、テクノロジーの力で事業の効率化をお手伝いしたいということ。当時の建設業界、特に中小の事業者ってFAXや電話がメインのコミュニケーションツールだったんですよね。
–大企業はともかく、中小企業にはそういうイメージがありますね。
小河社長:特に現場の職人さん相手のコミュニケーションはIT化がかなり遅れていました。ところがそんな建設業界でも、4、5年くらい前からスマホを仕事に使うような動きがでてきたんですよ。それでいよいよ大きな波が来るのではないかと考え、3年ほど前から『クラフタ』を構想し、2021年頭からサービスを提供開始しています。
–『クラフタ』はどんなサービスなんですか?
小河社長:建設・建築・リフォーム業界特有の商習慣に対応した業界特化型の顧客管理・案件管理・コミュニケーションツールです。Webアプリおよび、スマホアプリとして提供されており、紙の台帳あるいは社内PCでしか確認できなかった顧客情報や施工情報などをクラウドベースで管理できるようにするほか、チャット機能でこれまでFAXや電話、あるいは紙の手渡しなどで行われていたようなやり取りを効率化できます。–細かなやりとりが多そうなのでチャット機能は便利そうですね。別のインタビューで「建設業向けのLINE」を目指したとおっしゃっていたのを読みました。
小河社長:そうなんです。LINEであれば皆さん普通に使っているじゃないですか。そして、これを超えると難しいと思われてしまうんだろうな、と。この業界には職人さんなど、ITを使い慣れていない人も多いので。事実、私の両親はLINEを普通に使っていますけど、ビジネス向けのコミュニケーションツールを使っているイメージは全然湧きませんから(笑)。実際、電話の回数を大幅に減らすことができたとか、連絡のためだけに現場に行ったりする必要がなくなったとか、もう、『クラフタ』がないと仕事が回らないというお言葉を多くのお客さまからいただいています。
なお、現在は完全無料のフリーミアムモデルでサービスを提供しており、業界プラットフォームとして使われるようになることを目指しています。
–ちなみに建設業界をターゲットにしたのには何か理由があるんですか?
小河社長:まず、中小企業を応援するプロダクトを作りたいという気持ちがありました。その上で、じゃあどの業界でやっていこうかと考えた時、中小企業が多く、まだIT化が進んでいない業界として建設業界が思い浮かんだんです。
そして何より建設業界は規模が大きいですよね。意外に知られていないんですけど、日本人労働者の10人に1人は建設業界で働いているんですよ。よくよく考えてみると私の叔父も建設業だったりして。そういう面でも新しくサービスを立ち上げる先として有望な業界だと考えました。
–これまで2つのプロダクトを手がけている小河社長から、これからプロダクトを立ち上げようとしている起業家にアドバイスをいただけますか?
小河社長:1つ言えることがあるとすると、お客さまの声を聞いてそのまま作ってもうまくいかないということですね。大事なのはそうした声のうちどれをサービスに反映するのかの判断、そして、声にならないニーズを見つけだすことですね。これってもの作りに携わっている人なら皆、何となく知ってはいることなんですけど、実際にそれをやるのは思った以上に難しいんです。実際、私もすんなりとはいきませんでした。
–なにか失敗があったのですか?
小河社長:いくつかの機能で用意していた項目について、お客さまからのヒアリングを元に用意していたのですが、実際にサービスを提供してみたら半分以上が使われておらず、機能を複雑にしているだけになってしまいました。
–これもほしい、あれもほしいって言われて用意したのに、実際には使ってもらえなかったんですね。
小河社長:そうなんですよ。それでサービス開始してからしばらくしたタイミングでそうした使われていない項目をばっさりカットしたところ利用率がグッと上がりました(苦笑)。こうした機能カットには、お客さまからどんなにヒアリングしても行き着けないというのが難しいところです。「こういう機能がほしい」という声はたくさんいただけるんですけど、「この機能はいらない」っていう声はほとんどいただけませんから。–そのほか、『クラフタ』の開発で苦労したことはありますか?
小河社長:プロダクト以外の部分ですと、導入していただいた後、いかに定着させるかに力を入れています。ネックとなる部分を見つけだして、そこを乗り越えてもらうためにサポートする、いわゆるカスタマーサクセス的な部分ですね。
たとえば今は導入時に説明会を実施しています。『クラフタ』の場合、社外の人を登録するところが最初のハードルになっているので、実際に登録したい人の電話番号を用意していただき、その場で登録するまでをやってもらうことで利用率を上げるようにしました。結果、2021年4月と年末の比較でアクティブユーザー数は約4倍にまで改善。登録企業数も翌年2月時点で500社程度にまで増やすことができました。
–『クラフタ』の現在の取り組みについても聞かせてください。
小河社長:機能の改善はもちろんですが、現在は特に使ってくださるお客様を増やしていくためのセールスに力を入れています。
–そこにマイノリティがどのようにお役に立てていますか?
小河社長:昨年(2021年)の秋に契約し、まさに今、課題となっているマーケティングについてリード獲得をおまかせしています。全体的な目標の設定から、細分類化したターゲットにどういう手段で当たっていくかの優先順位設定などもしていただきましたね。
この際、一般的なマーケティング支援ですと、我々の業界にマッチしないような提案をいただきがちなのですが、マイノリティは業界理解が深く、業界特有の慣例などにも通じており、期待していた以上に的確な提案をいただけたことに感心しました。たとえば、長年業界に携わった人でないと知らないニッチなチャネルを活用し、訴求方法を工夫することによりCPAを抑えてリード獲得する手法などです。
–支援の成果についてもお聞かせください。
小河社長:半年前の月間リードは100件くらいだったのですが、これを今年(2022年)の3月までに300件にしようという当初の目標はどうやら達成できそうです(取材は2月に行っています)。
我々のようなスタートアップでは半年前と今で状況が大きく変わってしまうということもおこりがちです。そうした中、リード獲得だけでなく、その後のナーチャリングの実務まで、マイノリティがお持ちのB2Bマーケティングの知見を生かし、柔軟に対応していただけたことはとてもありがたかったですね。社内にマーケティング担当者がいない中、とても助かりました。
-最後に今後の『クラフタ』の展望を聞かせてください。
小河社長:コミュニケーションツールはみんなが使っているほど便利になっていくものなので、今後もこれまで以上にユーザー数を拡大していきたいですね。特に職人さんなどはいくつかの施工会社と取引しているのが普通なので、ある1社が『クラフタ』を使っていても、他社が使っていないということがおこりがちなんですよね。まずはこの状況を改善し、『クラフタ』の便利さを業界の皆さんに感じていただきたいです。
同社の新規事業『クラフタ』はフリーミアムモデルを採用したユニークなプロダクトです。既にSaaSモデルのプレイヤーが複数存在する中、プラットフォーマーとなるべく大胆な先行投資をされています。
同社の過去データから中小工務店のサービス利用率が高いことが判っていたので、中小工務店に特化したマーケティング施策を展開。工務店の方はオフラインでのコミュニケーションを好む傾向が強いため、デジタルマーケティングが効きづらいといわれています。しかし、コロナ禍ということもありデジタルを中心に施策を実行せざるを得ない状況にも関わらず、わずか半年で目標達成が目前に迫っています。
要因はターゲットへの接触が多いチャネル選定とそこでの商品の見せ方です。あまりの反響の多さにクラフタへの市場ニーズが高いことも再確認できました。新たなビジネスモデルで業界に風穴を開けようとしている同社を引き続き応援していきたいと思います。