働き方の変化と営業のデジタル化が加速する中、インサイドセールスは現代の営業活動において欠かせない手法となりました。従来の訪問営業中心のスタイルから、効率的で成果の出るインサイドセールスへの移行を検討している企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、インサイドセールスの基本概念から具体的な導入方法、成功事例まで、実務に活かせる内容を網羅的に解説します。必ず抑えるべきチェックポイントやKPI設定、実際の運用ノウハウまで、すぐに実践できる情報をお届けします。
インサイドセールスとは、オフィスに居ながらにして電話、メール、オンライン商談ツールなどを活用して行う営業活動のことです。直訳すれば「内側での営業活動」となり、従来の訪問営業とは対照的な手法として注目されています。
多くの方が疑問に持つのが「インサイドセールスとテレアポの違い」です。両者には明確な違いがあります。
項目 | インサイドセールス | 従来のテレアポ |
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目的 | 見込み客の見極め・長期的な関係構築 | 初回接点の設定 |
手法 | メール・電話等の複数チャネル | 主に電話 |
情報管理 | SFAでのストック型管理 | 単発的なアプローチ |
期間 | 長期継続(12ヶ月程度の場合も) | 短期集中 |
対象 | 問い合わせ等の反響リード中心 | リストベースの新規開拓 |
インサイドセールスは、アプローチ手法によって大きく2つに分類されます。
SDRは、マーケティング部門が獲得したリードに対してアプローチする反響型のインサイドセールスです。
特徴:
主な業務:
BDRは、ターゲットリストに対して能動的にアプローチする新規開拓型のインサイドセールスです。
特徴:
主な業務:
1. 顧客の購買プロセスの変化
インターネットの普及により、顧客は購入前に十分な情報収集を行うようになりました。企業主導から顧客主導への変化に対応するため、顧客の購買プロセスに合わせたアプローチが必要になっています。
2. 労働力不足への対応
少子高齢化による労働力不足と働き方改革の推進により、営業活動の効率化が急務となっています。インサイドセールスはテレワークとも親和性が高く、現代の働き方にマッチした手法です。
3. 営業活動の効率化・加速化
従来の訪問営業では多くの移動時間が発生し、非効率な商談も少なくありませんでした。インサイドセールスにより、より効率的で精度の高い営業活動が可能になります。
2019年の調査によると、日本でインサイドセールスを導入している企業はわずか11.6%に留まっています。欧米では既に営業活動の主流となっているため、日本企業にとっては競争優位性を獲得する大きなチャンスといえるでしょう。
インサイドセールスを成功させるためには、段階的かつ体系的な準備が必要です。ここでは実務で活用できる詳細なチェックポイントを紹介します。
チェック項目 | 内容 |
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✓ 目的の設定 | IS組織の定量的な存在意義、目的が設定されているか? |
✓ 商談化の定義 | アポイントと商談(商談化、案件化)の定義が営業とIS両者で合意されているか? |
✓ 失注の定義 | 失注の定義が営業とIS両者で合意されているか? |
チェック項目 | 内容 |
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✓ メールテンプレート | 20以上のメールテンプレートが登録されているか? |
✓ 辞書登録 | 日常的に利用する言葉は辞書登録されているか? |
✓ ナレッジの共有 | 録音データ、メールなどの成功事例が共有、ストックされているか? |
情報管理のルール詳細
チェック項目 | 内容 |
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✓ 架電履歴 | 記載方法が統一されているか? |
✓ メール履歴 | 送受信履歴はCRMに登録されているか? |
✓ リード所有権 | ルールは設定されているか?(最終活動日からn日以内は他のISは架電禁止等) |
チェック項目 | 内容 |
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✓ リード発生時対応 | リード発生と同時にSDRへアサインされるか? |
✓ 優先度対応 | 優先度の高いものについて、リード発生から5分以内に架電できているか? |
✓ アクション回数 | 1リードに対して架電とメールを組み合わせて5回以上アクション出来ているか? |
チェック項目 | 内容 |
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✓ トークフロー | 各リードに最適なトークフローは準備されているか? |
✓ 商談化率 | 商談化率15%未満のリードに対して仮説を準備できているか? |
✓ 通話時間 | 1着電あたりの限界通話時間が設定されているか? |
チェック項目 | 内容 |
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✓ 定量情報 | 従業員規模、売上高、業種などでターゲティングができているか? |
✓ 定性情報 | その他定性情報に基づいたターゲティングが出来ているか? |
✓ 見直しサイクル | 対象アカウントの見直しサイクルが設定されているか? |
チェック項目 | 内容 |
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✓ Why you, Why you now | アプローチに盛り込まれているか? |
✓ 複数手法 | 架電以外の手紙、紹介などのアプローチ手法が用意されているか? |
✓ 時間帯拡大 | 8-9時や12-13時、18時以降のアプローチも視野に入っているか? |
インサイドセールスの成果を最大化するには、適切なKPI設定が不可欠です。SDRとBDRで異なるKPI設定が必要になります。
以下の情報を全メンバーが確認できる環境を構築しましょう。
実績ベースまたは事業目標に応じた設計が重要です。
LTV(Life Time Value)をベースにした顧客分類を整理します。
成果の差と属人化を防ぐための標準化に着手しましょう。
ステップ | 目的 | 例 |
---|---|---|
①結論 | 自己紹介と電話の理由 | 「○○のツールを提供している株式会社△△です」 |
②オープニング | 質問の許可 | 「数点お伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」 |
③ヒアリング | 課題・ニーズの把握 | 「セミナー参加の背景を教えていただけますか?」 |
④クロージング | 商談打診 | 「課題解決に役立ちそうです。30分ほどお時間いただけますか?」 |
リソースを効率的に活用するための優先順位を付けましょう。
優先順位:
アプローチ手段の組み合わせ例:
現代のインサイドセールスは単なる「アポインター」ではありません。事業成長を牽引する重要な職能として位置づけられています。
インサイドセールスの職能は「対象」×「時間軸」の4象限で整理できます。
この4象限を自在に行き来できることが、インサイドセールスという職能の最大の特徴であり魅力です。
効果的なヒアリングにより、商談の成功確率を大幅に向上させることができます。
目的:サービス理解度と商談組み立てのヒント取得
質問例:「自社サービスを知っていただいたきっかけは何でしょうか?」
目的:解決したいビジネス課題の把握
質問例:「今回の情報収集ではどのような情報をお求めでしょうか?」
目的:決裁権と責任範囲の確認
質問例:「●●様の業務に役立つ情報を整理したいため、お役割をお伺いできますか?」
目的:提案の土台となる課題の特定
質問例:「ゴールの実現に向けて何が必要でしょうか?」
目的:競合状況と選定軸の把握
質問例:「弊社以外で話を聞いている予定のツールはございますか?」
目的:乗り換え背景と連携要件の確認
質問例:「HPに埋め込まれているタグを拝見していますが、現在は○○を利用されていますか?」
目的:コンペリングイベントの特定
質問例:「現行ツールの更新時期は何月かご存知でしょうか?」
目的:適切な提案スコープの設定
質問例:「費用が重要な選定軸になると思います。予算の上限があればお伺いできますか?」
目的:顧客期待との齟齬防止
質問例:「当日に必ず明確にしたいポイントはございますか?」
インサイドセールスは、現代の法人営業において必要不可欠な手法となっています。本記事で紹介したチェックポイントとKPI設定、実践的なヒアリングテクニックを活用することで、効果的なインサイドセールス組織を構築できるでしょう。
成功のポイント:
日本でのインサイドセールス普及率がまだ低い今こそ、他社に先駆けて導入することで大きな競争優位性を獲得できます。本記事の内容を参考に、自社に最適なインサイドセールス組織の構築を進めてみてください。
執筆者プロフィール:中元鈴香
BtoB領域に特化したライター。5年以上にわたり、SaaS、IT、人材、コンサル業界のコンテンツ設計とライティングに従事。上場企業のオウンドメディア立ち上げや、中小企業のSEO内製化支援も多数経験。